【小市民シリーズ】米澤穂信「春期限定いちごタルト事件」
米澤穂信作品は「満願」「王とサーカス」「本と鍵の季節」と…あとなんか短編みたいなのを読んだことがあるからけっこう知ってると思うんですが、この「小市民シリーズ」は読んでなかった
昔、漫画で読んだことがあったと思うけど覚えてないので原作を買って読んでみた
★あらすじ
目立たず騒がず、慎ましい小市民を目指すため恋愛関係にも依存関係にもならないが互いにフォローしあってる高校生の小鳩くんと小山内さん。
そんな小市民の二人だけど事件とつぜんやってくる
慎ましいはずの小鳩くんだけど、持ち前の好奇心は隠せずなんだかんだで事件を解決しちゃう日常ミステリー。
この作品は全部で5話
「羊の着ぐるみ」
小鳩くんは友達の健吾に強引に駆り出され、女子生徒の盗まれたポシェットを探すことになる。
ポシェットが盗まれた理由とは…
「For your eyes only」
小山内さんといちごタルトを買いに行った小鳩くんだったが、いちごタルトと小山内さんの自転車がサカガミとかいうやつに盗まれてしまう。
落ち込む小山内さんと小鳩くんだったが「同じ柄が2枚ある謎を解いてほしい」と美術部の先輩に依頼され気分転換がてらにその謎解明に挑む。
その絵を描いた作者は同じ高校の卒業生
絵は田園風景でけしてうまくはない、この2枚の絵が意味することとは…。
「おいしいココアの作り方」
絵の謎を解明したお礼に健吾が小山内さんと小鳩くんにおいしいココアをごちそうする。
ココアを飲みながら、おいしいココアの作り方を力説する健吾。
しかし、台所に行ってみるとココアを作った形跡などない。
健吾はどうやって3人分のココアを作ったのだろう?
「はらふくるるわざ」
テスト中に誰かが机に置いた瓶が落ちて割れた。
その音で気が散った小山内さんはテストの解答を思い出そうとしていたのに忘れてしまった。
その瓶はたまたま置かれていたのか、故意に置かれたのか…?
小鳩くんは謎解明に迫る。
「孤狼の心」
小山内さんの盗まれた自転車が車道で放置された状態で見つかる。
そのせいで、生徒指導室に呼ばれる小山内さんだったが、指導室に呼ばれるということは「小市民」として由々しき事態である。
静かに激昂する小山内さんは自転車を盗んだサカガミのしっぽをつかもうとするが、小鳩くんはサカガミに対して危険性を感じており小山内さんよりも先回りをしてサカガミが自転車を盗んだ理由を解明しようと健吾とともに捜査に乗り出す。
★感想
最初に言っておくと私は小鳩くんはあまり好きではないキャラクターだし、小山内さんに関しては「目立たないキャラのくせになんで小市民目指してんの?小山内さんの存在って意味あるのか?」と、失礼な事を思っていた。
謎自体も驚き要素や特別なトリックがあるわけでもなく著者の他の作品と比べるとそんなにひねりもないし
まあ、誰も死なないミステリーなので気を抜いて読めるのがこの作品が人気な理由なのかなと割り切って読んでたんだけど…騙されたよ。
「孤狼の心」で明かされる小山内さんの正体がこの作品のハイライトだと思うから詳しいネタバレは書かないけど、とにかく小山内さんの性向がやばすぎる。
あんな小さな女の子があんなに恐ろしい存在だったなんて…絶対に敵に回したくない、敵に回したら破滅させられる。
ほのぼの日常ミステリーの皮をかぶってるだけで、闇の深い人物造形をメインとした物語なんだなと痛感した。
ミステリー要素よりも登場人物の人間性を徹底的に掘り下げて、その行く末を楽しむのがこのシリーズの真の醍醐味なんだなあ…。
まあ、ハマりましたよ…やっぱりすごいわ…この作者さん。
小山内さんが過去に何をしたのか気になるのでさっそく続きを読んでいきます。(部屋に続きを積んでるので読む準備は万端)
【怪談シリーズ】井上雅彦「黒い遊園地」 工藤美代子「怖い顔の話」【短い感想】
最近読んだ怪談本を短い感想でまとめようと思う。
まず一冊目
ホラーアンソロジー「黒い遊園地」
これはアンソロジーとなっており遊園地をテーマにした怖い話を読むことができるんだけどもどちらかというと、ホラーというよりも世にも奇妙な物語的な話が多いように感じた。
色んな時代や架空の世界の遊園地をテーマにしていたり、ショートショートだったり作家さんによって個性を感じるアンソロ。
私がこの本の中で怖かった話は飛鳥部勝則さんの「番人」
息子とともに遊園地に来た湯川だったが、メリーゴーラウンドから降りてきた人達の身長が縮んでいることに気づく。
なにかおかしいと思いながらもメリーゴーラウンドに乗る湯川だがメリーゴーラウンドが回るたびに腹が切りつけられるように痛むのだった。
その理由を遊園地の職員の老人に聞くのだが、老人は言葉を濁す…。
この話、オチでやられた感がある。
怖いんだけどなんかちょっと面白い気もするという不思議な読了感だった。
あとこのブログでも感想を書いた「猫怪々」の作者、加門七海さんの作品「赤い木馬」も収録されている。
加門七海さんの作品は怪談エッセイは何度か読んだことあるけど物語では読んだことなかったので、幻想的な世界観の話を書く人だったのかと完全に意表を突かれた。
2冊目
工藤美代子「怖い顔の話」
これは著者の身近で起きた怖い話を集めたエッセイ怪談本。
不倫相手の女性の生霊が奥さんに付いてて霊障が起きているというのに不倫をやめない男性の話とか、目を合わせてはいけない人の話とか
著者の近所で起きた殺人事件の容疑者の話とか
「幽霊が出てきて怖い!」って感じではなく「なんかおかしい…」というような日常に潜む変な違和感みたいなものがぎゅっと詰まっている本。
もちろん、怖い話ばかりではなくほっこりする話も良かった。
著者の弟さんのお世話をしていたヨシエさんの霊感は不思議な話ではあるけれど、ヨシエさんと弟さんの絆や、著者のヨシエさんへの想いが伝わってきて怖いというより心が洗われるような気持ちになった。
あとがきも霊的なものに遭遇したときの対処法などが書かれていて読み応え満載。
実際、霊とか会いたくないけどいざというときに覚えておこうと思えた。
イースターがテーマのウサギと鳥の絵本【ビアトリクス・ポター、小川未明、新美南吉、なかえよしを】
4月4日はイースター(キリストの復活祭)ということで
その絵本などのひとくちメモ感想を書いていこうと思います。
★ピーターラビット①/ビアトリクス・ポター
まず一冊目、イースターはウサギということで定番の「ピーターラビット」
これ私が子供の頃、持ってたんだけど引っ越しとかで捨ててしまって改めて読んだのだけども、ピーターラビットってこんなハードな話だったんですね。
ピーターのお父さんは畑の主のマクレガーさんにミートパイにされたのに、いたずら好きのピーターはそれでもマクレガーさんの畑を荒らしに行く。
始末するためにピーターを追うマクレガーさんと泣きながら逃げ惑うピーターの逃走劇というわりとブラックな絵本でした。
著者のビアトリクス・ポターはキノコなどの研究をしていて論文を出していた。(女性だからという理由で却下されたが…)
そのせいか、著者の挿絵は動物だけでなく植物などが細密に描かれていて素晴らしい。
★ウサギ/新美南吉
こちらは「手袋を買いに」「ごんぎつね」で有名な新美南吉
牛のように大きくなるウサギだとだまされ、積荷を運ぶ牛のように使おうという目的で買ったものの、いっこうに大きくなることはなくやきもきする行商人の話。ページ数は短いながらもコメディ感がある。
★うさぎと二人のおじいさん/小川未明
うさぎ好きのおじいさんはペットのうさぎを放し飼いにしているのだが、それが気に食わない隣のおじいさんはある日、庭に侵入してきたうさぎ好きのおじいさんのうさぎに向かって咳をして風邪をうつす。
それに怒るうさぎ好きのおじいさん…そんな話を聞きつけて噂する隣人たち…そこからこの諍いが村中に広がっていく…。
皮肉の効いたオチが秀逸な短編でした。
★ことりとねこのものがたり/なかえよしを
イースター=たまご=とり…という無茶な連想で読んだ絵本
この絵本は私が子供の頃から所持していてたまに読んでるのですが何度目かの再読。
主人公のくろねこは猫のくせに高い所に登れない弱虫で、そんなくろねこの友達は空を飛びたい小鳥。
ある日、自由に飛んでみたいという小鳥をかごから出してやり飛ばしてやることにした…自由に大空を飛ぶ小鳥
帰ってきた小鳥はくろねこに「また飛びたいわ」と言い残し
次の日、死んでしまう。
実は小鳥は年老いており飛んだことで体力を消耗していたのだ。
「小鳥を殺したな!」と小鳥の飼い主に追われるくろねこ
くろねこは小鳥の羽をくわえて逃げ出した、ある目的を持って…
この絵本は人のために勇気を持って立ち向かうということを描いていると書いているが、私は小鳥とくろねこの絆にも感動した。
特に、最後の高い木の上で空を舞う小鳥の羽を眺めるくろねこの後ろ姿の絵には涙腺が刺激される。
子供の頃に読んだ時はただ小鳥が死んでかわいそうだなという感想だったけど
大人になってから読んだら勇気のあり方、種を超えた友情、大切な人の為に何ができるかを考えさせられる作品になっていた。
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上の3冊はKindleで無料で読めるし、充分に面白い話なので読んで損はないお得な作品です。
「ことりとねこのものがたり」はなにか壁にぶつかった時にまた読むと思う。
イースター関係なくいつでも楽しめる絵本の感想でした。
【本格推理小説】「チャイナ橙の謎」エラリー・クイーン
久しぶりのエラリー・クイーン
ずっと気になっていた国旗シリーズの
「チャイナ橙の謎」をこの前、読了。
まあ、いつもの通り
推理小説系の小説は大した感想が書けないので覚書として記録。
☆あらすじ
ディヴァシー嬢は看護師でヒュー・カークの世話をしていた
気難しいヒューのおかげでストレスの貯まる毎日だったが
ひとつだけ、癒やされる時間があった。
それは、ヒューの息子のドナルドの秘書オスボーンに会うことだった。
その日もドナルドの部屋の控え室でオスボーンに会って
とうとうデートの約束にまでこぎつけた。
そして、ドナルドを取り巻く面々が登場する。
登場人物の各々の思いが交錯するなかとんでもない事件が起きる。
鍵のかかったドナルドの部屋で小男の変死体が見つかった
その現場が妙なものだった
小男はにやけた表情を浮かべており、服は逆さまに着ている
さらに、長い槍がスーツの首の襟の所から足の先まですっぽりと
体をまっすぐに固定するように差し込まれている
おまけに、部屋の家具もすべて逆さまのあべこべになっているのだ
その後の解剖の結果、小男は殺害される前にチャイナ橙を食べていたことがわかった。
エラリーは捜査を進めるうちに
中国はなにもかもがあべこべの文化で成り立っていることに思い当たる
小男の胃袋から見つかったのもチャイナ橙
これはにわかに、中国が関係があるぞということで
中国文化に精通している研究家であるジョー・テンプルに助力を仰ぐ
しかし、事件は様々な容疑者が現れては消えという状態で一向に先へ進まない。
そんなところに、ドナルドの友人であるマクゴワンがエラリーに相談に来る。
その相談内容とはある切手商から切手を買ったのだがその切手が問題だというのだ。
エラリーはさっそくその切手を見てみる
すると、その切手はあべこべに印刷されていた。
がぜん、事件に関係があると睨んだエラリーは、その切手を売った切手商を問い詰めると、そのあべこべ切手をある男からマクゴワンに売って欲しいと頼まれたから売ったのだと自供した。
その男はドナルド・カークだった。
私が読んだのはこっち↓
☆感想
あーーーー、これはトリックも何もかも見事に分からんかった。
今回の作品は読み進めていくうちに、登場人物たちの関係が次々と進展していって関係性が変わってくるし
容疑者らしき人物が登場して事件を撹乱するだけして退場して行くしで
私の頭まであべこべになった。
だからエラリー・クイーン恒例の「読者への挑戦」は完全に投げて回答編を読んだのだけど…
正直、トリックに無理があるような気がする
というよりも、好みではなかった。
少しだけトリックのネタバレになるかもしれないけど
密室トリックに道具を使うという行為が好きではないようだ
(横溝正史の本陣殺人事件も解せないと思ったことがある)
しかし、この一見意味のないトリックから意味を見いだし
犯人を導き出したエラリーの手腕は見事だったし
犯人は小男の正体を隠したかったわけだけど
あべこべトリックだからできる隠蔽方法でそこは旨いなと思った。
でもこの作品はエラリー・クイーンの著書の中でも
傑作とは言い難い…ような気がする。
強いて言えば癖の強い、好き嫌いの分かれる作品か。
【怪談シリーズ】「山と村の怖い話」平川陽一【短い感想】
山系の怖い話といえば「山怪」という作品があるのですが↓
山とか神秘に包まれた怪談も大好きで
似たようなタイトルのこの作品も読んでみた。
「山と村の怖い話」これは、けっこう怪談慣れしてる私でも怖かったです
この作品は
「山の不思議」
「村の怪異」
「不吉な因果」
「伝説の謎」の4つの章に分かれているのだけども
やはりメインとなる山と村の怪談が非常に良い
山と村の怖い話と銘打ってるので山村の神秘性を
おしたような話が最初から最後まで続くのかなと思ってたけど
現代怪談からキツネや蛇などの狐狸妖怪の怪談をはじめ
あの有名な「津山事件」などの殺人事件が絡んだいわゆる人怖話
伝説や伝承が元になっている少し不思議な話など様々で
話の幅が広くてぶっ続けで読んでても飽きない。
また、村八分や炭坑労働者、遊郭跡地の怪談なども収録されているのだけども、陰惨な歴史を掘り下げながら描かれていて幽霊よりも人間の心の闇の方が怖いなと思わせられる話が多いように感じた。
あと個人的に気に入ってるのが「伝説の謎」の章
その土地のルーツや儀式やパワースポットなどの
少し不思議な話が目白押しで知的好奇心をくすぐられた。
なんか、行ってみたいなと思いましたね。
山系怪談のなかでも上位に入る作品でした。
いつか「山怪」の感想も書きたいな。
辛口評価「トマシーナ」ポール・ギャリコ
この前、読み終わりました。
ポール・ギャリコは初読み。
でもポール・ギャリコは家の本棚に何冊か並んでいてファンタジーものを読みたい気分だったので「トマシーナ」を読みました。
★あらすじ
獣医のマクデューイは本当は人間の医師になりたかったのだが、親の方針で獣医になった。
もちろん、そんな動機では仕事にも誇りを持てないであろう
毎日毎日、たかが犬猫の治療をする日々
マクデューイは治療の見込みがない動物は容赦なく安楽死させるのが方針だ。
「無駄に長生きをさせて苦しませるなら死なせればいいだけ」
その合理的な考え方で飼い主の気持ちを斟酌せずに患畜を安楽死させていた。
その考えはただ一人、大切にしている幼い娘メアリーの愛猫トマシーナに対しても同じだった
トマシーナはある日、高いところから落ちたせいで
身体の具合が悪くなってしまう
それに気づいたメアリーはトマシーナを連れて
父マクデューイの動物病院にやってくる
しかし、忙しかったマクデューイは
トマシーナをちらりと見て、もうだめだと判断をくだし安楽死させる。
トマシーナは「死にたくない!もっとメアリーといたい!」と
心の中でマクデューイに懇願するがその気持ちは届くはずもなく
薬を嗅がされ安楽死させられてしまう。
その日から、メアリーは心を閉ざした。
会話をすることもなく、体調も日に日に悪くなっていき生き人形のようになってしまう。
そんなおり、マクデューイは車で街をまわっていると
森の魔女と噂されるローリという女性に出会った。
ローリは死に瀕している動物を保護して助けて暮らしているのだ。
ローリはその日も怪我をして瀕死のアナグマを保護したが
あまりにもその怪我が酷すぎてマクデューイに助けを求めた。
マクデューイはそんな彼女を最初は愚かだと思っていたが
アナグマの治療を開始し、甲斐甲斐しく介抱をするローリをみているうちに考えは変わっていった。
心を入れ替え始めたマクデューイだった、メアリーは変わらず衰弱していくばかりだった。
あらゆる手を尽くすマクデューイだったが、非情にも運命の日は訪れた。
★感想
良かった。すごく良かった。
話の構成もそれぞれのキャラクターの目線とトマシーナ目線の語りがあり
それぞれの複雑な胸中が描かれており理解もしやすい。
特にトマシーナの口調は面白い。
ツンツンしてて飼い主メアリーとは絶対的な距離を置くけど、メアリーへの愛情は所々感じさせられる
トマシーナがお高くとまってる感じは確かに猫らしく
ポール・ギャリコってほんとに猫好きなんだなって思わせられる。
トマシーナの死後
いきなり、エジプトの高貴な猫の女神バストラーが登場して
ローリと会話してたりして意味がわかんなくなるけど
実はその存在が物語後半への大きな伏線になってたり
プロットはとても緻密に作り込まれているのが素晴らしい。
この作品でポール・ギャリコを好きになった。
…が、問題はマクデューイだ。
こいつのせいで「トマシーナ」という作品に対して
好き…いや、でも…という気持ちがせめぎあっている。
なぜなら、マクデューイ。猫飼いからすると敵のようなやつだからだ。
ここからは、私の個人的な考えなうえに愚痴感想なので嫌だと思うだろうから読み飛ばしてください。
ここは、私のブログなので率直な感想は書かせてもらう。
このマクデューイ、物語の序盤から中盤にかけて
トマシーナを亡くしたメアリーの喪失感を理解できない。
いや、分かっててもかたくなにしようとしてない。
いくら、まわりの人がメアリーにとってトマシーナが大切な存在なのだと説いても「たかが、猫じゃないか」と、いっこうに話を聞こうとすらしない。
いちおうね、物語はハッピーエンドです。
それはそれはとても奇跡みたいなハッピーエンド。
でも、はっきり言わせてもらうと釈然としない。
もし、私がこの「トマシーナ」の世界にいるとする。
自分の飼ってるペットをまだ助けられる余地があるのに、マクデューイに安楽死させられたらめちゃくちゃ恨むと思う。
で、その恨んでいるマクデューイの娘メアリーの猫を安楽死させて
メアリーが衰弱して弱っていきました。
でも、ローリに出会って最終的に助かりました。
そして心を入れ替えました。幸せに暮らしました。
「は?」と思う
私のペットを殺したくせにずいぶん都合がいいなと思ってしまう。
悪いけど…
確かに、マクデューイはローリに出会ってから
たくさんの動物を助けるために行動したと思う。
妻を亡くして大変な目にあった事も痛いほど分かる。
だから、マクデューイにこんなハッピーエンドがあったって全然良い。
それは分かってるけど…
私がマクデューイにペットを殺された立場だったらどうしても許せない。ごめんなさい、こんな感情的な感想しか書けなくて…
でも「トマシーナ」この作品に関してはこの結末が最善だと思います。
そしてこりずに猫が主人公の「ジェニィ」読もうと思います。
四畳半神話大系のスピンオフ「四畳半タイムマシンブルース」森見登美彦
さあ、読み終わったぞー「四畳半タイムマシンブルース」
四畳半神話大系の主人公、主人公が想いを寄せる明石さん
悪友の小津、下鴨幽水荘の主の樋口氏が帰ってきた……
と、言いたいところだけど私は森見登美彦氏のファンになって日が浅い
なもんで「四畳半神話大系」をまだ読んだことがない
そんな私がこのスピンオフ作品の感想を無謀にも書いてみた
★あらすじ
主人公はとにかく冴えない大学3回生。
8月12日。
大学のクソ暑い下宿「下鴨幽水荘」で悪友の小津とだらだらと過ごしていた。
それもそのはずクーラーのリモコンにコーラをこぼして壊してしまったのだ。
その事件は前日の8月11日におきた
とある事情で傷心の主人公が、とぼとぼと下鴨幽水荘に帰るが
下鴨幽水に住む面々が部屋で待ち受けていた
そして「さあ、裸踊りを踊るのだ」と桶一つを渡して裸踊りを強要する
しかし目の前に憧れの明石さんがいる
そんなこっぱずかしいことできるわけがない
「こうやって踊ればいいんですよ〜」と悪魔的な笑顔を浮かべて迫る悪友の小津。そのとき、小津の腕が冷蔵庫に当たった。
こぼれるコーラ…それはクーラーのリモコンに降り注ぎ…
リモコンはお釈迦になったのだ
そして8月12日の現在に至る。
だらだらと過ごす主人公と小津の部屋に明石さんが訪問する
映画研究会の明石さんは自作のぽんこつ映画の編集をしていたのだが
神妙な顔をしてノートパソコンを覗いている
そのぽんこつ映画には
下鴨幽水荘のメンバーが出演しているのだが
演技をしている小津の背後の下鴨幽水荘の2階で
ぽかんとしている小津がもう一人写っているのだ
小津が2人?小津は双子なのか?
どういうことだ、これは?と頭を傾げる2人
そこに現れるもじもじゃ頭の青年、彼は田村と名乗りすぐに姿を消した。
続いてさらに、不思議なことがおこる。
下鴨幽水荘のかたはしでドラエ◯んに出てくる
タイムマシンのようなものを小津が見つける
興味津々の下鴨幽水荘の面々
発見した小津はそのタイムマシンのようなものに乗って
数字のようなものをいじる
すると、小津はタイムマシンとともに消えた
心配する面々だったがやがて小津は帰ってきた
「これは本物のタイムマシンです」小津はそう言い切る
下鴨幽水荘の2階からぽんこつ映画の演技をしている自分を見たのだと
そう、あの映像はタイムスリップした小津だったのだ
そして主人公は思いつく
そうだ、この暑い夏を乗り切るにはこれしかない
「クーラーのリモコンを取り戻そう」
主人公たちはタイムスリップを決意する
★感想
いやー…バカバカしくて笑いっぱなしの読書時間を過ごした
ただ、クーラーのリモコンを取り戻すためだけに主人公たちはドタバタ劇を繰り広げる。
しかし、もっと面白くなるのは
時間を遡るということは宇宙の破滅を招くかもしれないと気づいた主人公が、暴走する下鴨メンバーを止めるべく立ち上がる所からだと言える
宇宙の破滅などどうでもいいと言わんばかりに
銭湯で盗まれたヴィダルサスーンを取り戻そうとする樋口氏
奔放に駆け回る羽貫さん
11日に、傷心で帰ってきた主人公の弱みを握ろうと動き出す非道な小津
それを止める主人公
時空をわちゃわちゃする面々がこの世のものとは思えないほど面白い
こんなやつらをどうまとめて
主人公は無事に現代に戻るというのか
そして田村君は何者なんだ?
今作も、もちろん森見節は健在だし
物語は過去と現代を行ったり来たりするけど
そこをうまく使った伏線がたくさん張られており
その伏線がひとつひとつ回収されていくさまは、まるで推理小説の如し。
そして、笑いの中に潜む主人公と明石さんの甘酸っぱい恋愛要素
この2人の未来は…?
くだらない戦いと笑いと恋の青春タイムスリップラブコメ。
「四畳半神話大系」をまだ読んでなくても充分楽しめる素晴らしい作品でした。