読書人間の電子書斎

〜今まで読んだ本を記録して自分だけの図書室を作るブログ〜

絶望することを悪とするのはやめようや「絶望名人カフカの人生論」

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落ち込んでるときにポジティヴな言葉をかけられても

心を閉ざした状態だとなにも響かない。

 

逆に、ネガティヴな言葉や名言の方が

「自分とおなじ考えの人がいるんだ!一人じゃない!」

と、なることの方がむしろ多い。私の場合。

 

絶望名人カフカの人生論

絶望名人カフカの人生論

 

本書は「変身」「城」で有名なカフカの残した

ネガティヴな名言を集めた作品なのですが一言でいうと好き。


このブログを読んでしまうと分かるとおり

私も基本的にはネガティヴ

落ち込みやすく、内に閉じ籠りやすい

加えていうならひねくれてる。

 

でも、カフカの方が私を越える想像の後ろ斜め上をいくような

ネガティヴさだった。(ひねくれてはない基本的に優しい人)

逆に私の方が

「大丈夫か?そこまで悲観しなくても…」

と、カフカを勇気づけたくなる。

 

気に入ってる名言を3つほどあげてみた。

1「ミルクのコップを口のところに持ち上げるのさえ怖くなります」

 

分かりみ。予期不安てやつかな。

 

このあと、破片が砕けて顔にとんでくることも

起きないとは限らないから…とカフカは言ってるから。


でもそれって、ありとあらゆるものが怖くなった結果
ついにはなにもできなくなる…ということだと思う。

 

共感できてしまう。

 

というか、私も尖ったものを見て

これをもしふみぬいたら…とか

折り畳みテーブルの金具を見ていて

ここに指を挟んだりしたら…と(子供の頃、挟んだことある、血が出た)

一人、もんもんと考えてることがよくある。

2「ぼくはひとりで部屋にいなければならない(中略)ひとりでいれば何事も起こらない」

 

この言葉も分かりすぎてしまって怖い。

 

部屋だけは怖くない。

傷つくものはないし

逆に誰かを傷つけることもない。

だから、自分は籠ってればいい。

 

でも、部屋にいてもいいことはないんだ。

ずっと、部屋にいるとこのままで

楽しいことすらできずに死んでいくんだ…とか

思って逆に部屋にいても怖くなってしまう。

 

でも、一歩を踏み出す勇気がないゆえに

自分の殻の中で閉じこもったままでいるから

の「コップすら怖い」状態に陥る。


3「ちょっとした散歩をしただけで疲れのためなにもできませんでした」

 

これはガチであるある。

人前に出ただけで三日は眠れるレベル。

驚くほど体が生きようとしてない。

 

カフカが恋人に「この人は生きることに向いてないんです」

と言われた話を読んで私にまでぐさりときた。



それでも、カフカは保険会社で働いておりかなり良い成績をおさめていたそうな。

 

そういえば、仕事でカフカは工事現場の下見に行くことになったのだが

「上から物が落ちてきて死ぬかもしれない」

と、持ち前の予期不安を発揮してヘルメットをかぶっていった。

 

その頃の工事現場の人たちはヘルメットはかぶってなかったんだけども

そんなカフカを見て「俺らもかぶった方がいいんじゃね?」とカフカの不安がうつり、現場の人達はヘルメットを被るようになった。

今現在でも工事現場ではヘルメットをかぶるけどカフカが発案者だったのかと驚く話のひとつ。

 

 

また、カフカはとある精神病の患者と話をしたことがある。

カフカと話をした精神病の患者は

「初めて私を理解してくれた!医者でもできなかったのに!」と

輝くような笑顔を浮かべ喜んでいたらしい。

 

結果的にこのネガティヴな性格は役に立つこともあるんだなあというか

この人、ネガティヴなのではなく繊細すぎる…が正しいのかも。

 

ポジティブな人なら現実なんて見たくないから

多少はなにも考えずに生きてると思う…だから、ネガティヴにはならない。

カフカの場合はとことん

現実の…深淵を見すぎた結果こうなったんだと思う。私の見解。

 

でも「変身」などの不条理な世界や不安になる世界観を

構築して評価されて文豪になったことは結果オーライ…と言える。