村上春樹 「一人称単数」
村上春樹「一人称単数」を読んだのだけど
やっぱり、村上春樹って難解だねって話。
★あらすじ
この作品、エッセイ風の短編となっており
まあ、難解だねって言ったけど今までの村上春樹作品と比べると
格段に読みやすい。
今まで出会った女性の話や
学生時代に経験した不思議な出来事など著者自身か、創作かはわからないけど少しだけ著者の経験談も入ってる感じがする短編集だった。
★ざっくり感想
うーーん、ちょい難しい。
そもそも私は文学作品を読んでこれといったものを見いだせるほどの
読解力がなくて…ただ、好きで読んでるだけなのですが…
この8篇の短編集のなかでとくに好きな話を3つ書いてみよう
・ヤクルト・スワローズ詩集
村上春樹が野球とくにヤクルトについてあつく
しかし、スタイリッシュに語ってるんですがこれが新鮮で面白かった。
村上春樹が野球好きなのは知ってたけど
詩集を書くほどに愛しているとは…
しかも、他の作品では淡々とした感じの文章を書く人なのに
野球となるとこれでもかと熱く語り
ヤクルトへのラブコールとも言えるような詩を比喩表現たっぷりで
書くもんだからなんだかいつもと違う村上春樹の側面を知ることができて読んでて楽しかった。
・謝肉祭carnival
この話の「僕」(それが村上春樹がどかわからないけど)は
ひとりの醜い女性と出会う(彼女は結婚している)。
しかし、不思議なことに彼女は僕と意気投合する。
シューマンの「謝肉祭」という曲を聴き比べ記録をつけるという楽しみを二人は見つけ出しあくまで友人として頻繁に会っていたのだが
いきなり、彼女と連絡がつかなくなる。
ラストで「僕」は真実を知るのだがけっこう衝撃をうけた。
彼女はまるで謝肉祭(キリストの祭り)の面をつけているかのように
表側だけ繕っていて本心がどこにあるのかわからない女性で、人間の本質はどこかについて考えさせられる内容だった。
・品川猿の告白
主人公の「僕」が古びた温泉旅館で
言葉を話し、旅館で働く猿と出会う話。
その猿は人間の女性しか愛することができない
しかし、人間と付き合うわけにはいかない。
そこで、猿は自身のふしぎな能力を使い
女性のあるものを奪い一時の満足を得るんだと「僕」に告白する。
猿の気持ちを思うと心が締め付けられるような話だった。
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こんな感じで、この作品は村上春樹のなかでも
ユーモアやファンタジー要素もあり読みやすい。
また、他の話も人生の大切な一部分を切り取っていて
読んだあと「私ならこの時どうするだろう」とか
「ああ…こんな気持ちわかるなあ」とかそんなことを考えながら読める作品だった。