辛口評価「トマシーナ」ポール・ギャリコ
この前、読み終わりました。
ポール・ギャリコは初読み。
でもポール・ギャリコは家の本棚に何冊か並んでいてファンタジーものを読みたい気分だったので「トマシーナ」を読みました。
★あらすじ
獣医のマクデューイは本当は人間の医師になりたかったのだが、親の方針で獣医になった。
もちろん、そんな動機では仕事にも誇りを持てないであろう
毎日毎日、たかが犬猫の治療をする日々
マクデューイは治療の見込みがない動物は容赦なく安楽死させるのが方針だ。
「無駄に長生きをさせて苦しませるなら死なせればいいだけ」
その合理的な考え方で飼い主の気持ちを斟酌せずに患畜を安楽死させていた。
その考えはただ一人、大切にしている幼い娘メアリーの愛猫トマシーナに対しても同じだった
トマシーナはある日、高いところから落ちたせいで
身体の具合が悪くなってしまう
それに気づいたメアリーはトマシーナを連れて
父マクデューイの動物病院にやってくる
しかし、忙しかったマクデューイは
トマシーナをちらりと見て、もうだめだと判断をくだし安楽死させる。
トマシーナは「死にたくない!もっとメアリーといたい!」と
心の中でマクデューイに懇願するがその気持ちは届くはずもなく
薬を嗅がされ安楽死させられてしまう。
その日から、メアリーは心を閉ざした。
会話をすることもなく、体調も日に日に悪くなっていき生き人形のようになってしまう。
そんなおり、マクデューイは車で街をまわっていると
森の魔女と噂されるローリという女性に出会った。
ローリは死に瀕している動物を保護して助けて暮らしているのだ。
ローリはその日も怪我をして瀕死のアナグマを保護したが
あまりにもその怪我が酷すぎてマクデューイに助けを求めた。
マクデューイはそんな彼女を最初は愚かだと思っていたが
アナグマの治療を開始し、甲斐甲斐しく介抱をするローリをみているうちに考えは変わっていった。
心を入れ替え始めたマクデューイだった、メアリーは変わらず衰弱していくばかりだった。
あらゆる手を尽くすマクデューイだったが、非情にも運命の日は訪れた。
★感想
良かった。すごく良かった。
話の構成もそれぞれのキャラクターの目線とトマシーナ目線の語りがあり
それぞれの複雑な胸中が描かれており理解もしやすい。
特にトマシーナの口調は面白い。
ツンツンしてて飼い主メアリーとは絶対的な距離を置くけど、メアリーへの愛情は所々感じさせられる
トマシーナがお高くとまってる感じは確かに猫らしく
ポール・ギャリコってほんとに猫好きなんだなって思わせられる。
トマシーナの死後
いきなり、エジプトの高貴な猫の女神バストラーが登場して
ローリと会話してたりして意味がわかんなくなるけど
実はその存在が物語後半への大きな伏線になってたり
プロットはとても緻密に作り込まれているのが素晴らしい。
この作品でポール・ギャリコを好きになった。
…が、問題はマクデューイだ。
こいつのせいで「トマシーナ」という作品に対して
好き…いや、でも…という気持ちがせめぎあっている。
なぜなら、マクデューイ。猫飼いからすると敵のようなやつだからだ。
ここからは、私の個人的な考えなうえに愚痴感想なので嫌だと思うだろうから読み飛ばしてください。
ここは、私のブログなので率直な感想は書かせてもらう。
このマクデューイ、物語の序盤から中盤にかけて
トマシーナを亡くしたメアリーの喪失感を理解できない。
いや、分かっててもかたくなにしようとしてない。
いくら、まわりの人がメアリーにとってトマシーナが大切な存在なのだと説いても「たかが、猫じゃないか」と、いっこうに話を聞こうとすらしない。
いちおうね、物語はハッピーエンドです。
それはそれはとても奇跡みたいなハッピーエンド。
でも、はっきり言わせてもらうと釈然としない。
もし、私がこの「トマシーナ」の世界にいるとする。
自分の飼ってるペットをまだ助けられる余地があるのに、マクデューイに安楽死させられたらめちゃくちゃ恨むと思う。
で、その恨んでいるマクデューイの娘メアリーの猫を安楽死させて
メアリーが衰弱して弱っていきました。
でも、ローリに出会って最終的に助かりました。
そして心を入れ替えました。幸せに暮らしました。
「は?」と思う
私のペットを殺したくせにずいぶん都合がいいなと思ってしまう。
悪いけど…
確かに、マクデューイはローリに出会ってから
たくさんの動物を助けるために行動したと思う。
妻を亡くして大変な目にあった事も痛いほど分かる。
だから、マクデューイにこんなハッピーエンドがあったって全然良い。
それは分かってるけど…
私がマクデューイにペットを殺された立場だったらどうしても許せない。ごめんなさい、こんな感情的な感想しか書けなくて…
でも「トマシーナ」この作品に関してはこの結末が最善だと思います。
そしてこりずに猫が主人公の「ジェニィ」読もうと思います。