読書人間の電子書斎

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ブラックユーモアが冴える「短劇」坂木司

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6月に入って1冊目に読了した本

 

坂木司さんの「短劇」

 こちらは26篇の短編集になっており

そのなかでも、私がお気に入りだった話のあらすじとざっとした感想を書いていきたいと思います。

 

「雨やどり」

結婚を控えた女友達の買い物に付き合う主人公の男性の話

実は、主人公も女友達の事が好きだったのだけど、あろうことかその女友達の結婚相手は主人公の兄だった。そして、主人公の選んだ道は…

 

これは、精神がゴリゴリと削られてしまう話だった

主人公のねっとりとした復讐が地味に怖い

 

「M M」

会社での憂さ晴らしをネットの掲示板に書き込む事を日課としている母と同居している主人公の女性

その日も掲示板を見ていたのだが、投稿者MMという人物の書き込みを見ていると自分の生活を監視されているような書き込みばかりだった

MMの正体とは…

 

ネット社会だとこういうこともあるかも?といった感じで、作り話として読むことができなかった…

 

「ケーキ登場」

とあるフレンチレストランに来ている客たちのモノローグのみで展開していく話。

それぞれの思惑が絡みあい、最後にはケーキを運んだパティシエに絶望的な事態が起こる

 

登場人物のモノローグのみで展開していくのが面白い、全員に少しずつ関連性があって短い話なのに良くできている

 

「最後」

最後の人生を楽しむ男たち

最後のドライブ、最後の旅行、最後の食事、最後の美しい女性との性行為、最後の景色…

 

この話とにかく「さいご」に待っているオチが秀逸で、ぜひ読んでみてほしい「最後」と「最期」の使い分けがうまくておもわず唸ってしまった

 

「最先端」

自在に色の変わるネイルアートを施してもらった女性

しかし、その爪にはとんでもないものを埋め込まれてしまう鳥肌モノの話

 

想像するとゾワゾワする整理的嫌悪を煽るのがうまいなあと思った

 

「秘祭」

17歳の男女が大人になるために行われる通過儀礼の祭りの取材をさせてもらう事になった主人公。

しかし、その祭りは世にも恐ろしいものだった。

 

この祭り、もし私がされたなら離脱して憤死する可能性があるけど、誰もが「いっそころしてくれ…」と言いたくなる事必至だと思う

最後まで残っている村の村長の言い分にもめいっぱい皮肉が効いてて好きな話。

 

「眠り姫」

深い森の奥にあるお城で眠り続けているお姫様に会うことになった冒険家、いざキスをして起こそうとするも思った姫の体が膨張し腐り爆発してしまう。焦る冒険家だったが、姫の体は少しずつもとに戻っていった。

なんとか、死と再生を繰り返す姫を起こそうと奮闘する冒険家だったが…

 

「永遠の命」がいかに滑稽か、カボチャで例えて教えてくれる、くすりと笑える良い話だった。

 

★まとめ

坂木司さん作品については前に「和菓子のアン」を読んでいたのだけど、この作品がほんわか日常ミステリーだっただけに

「短劇」を読んだ時「おいおい、これ本当に同じ作者がかいた本かよ!」

と、つっこみをいれてしまった。

しかし、先にも書いた通り怖い話もあるけどサキ的なブラックユーモアが効いているし、オチも「それは予想できなかった」と思うような捻りがあって面白かった。

 

この作者さんはこれからも追いかけていこうと思う。

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