怖い本祭り最終回って事で、いっきに2冊の本の感想をだべりまくっていこうと思います
1冊目「旧怪談」
まず、京極夏彦…「巷説百物語」「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」は読了済みで、おととい読み終えたのは「旧怪談」という本です
この作品は、江戸時代の「耳袋」という怪談を京極夏彦氏が現代風の文章にアレンジして読みやすくしたもの
印象的だった話を2つほど…
「ぼろぼろ」
「トイレに行く」と言って20年立ってから戻ってきた男性の話
なんでも20年の記憶がないという、まるでバミューダトライアングルに入った人みたいな事を言うという変な話
今で言うパラレルワールドとかタイムトラベルみたいな感じで、江戸時代にもそういうSF的な話を創作してしまう人がいたんだねえ…と、しみじみ考えた
「プライド」
浪人が餅屋に子供がお腹を空かせてるから「金を恵んでくれ、必ず返すから」と物乞いをし、押し問答になるが雪駄直しの人が気を回したおかげで子供に餅を食べさせてやる事はできたけど、最後には「必ず返す」という武士の義を重んじて子供と自殺するという話は考えさせられた
今流行りの自己責任論も行き過ぎるとこうなるという見本のような話だと感じた
他にも、身に覚えがないのに妊娠した女性の話、猫をかわいがっていたのにその猫に取り憑かれるという悲惨な話など
がっつりした怖い話はもちろん、王道怪談話、ユーモラスな話まで様々
ところで、この本は一つ一つの話の原文も併録されてるから、ちょっとした国語の勉強もかねて読み比べてみるのも面白いと思います
2冊目「ひとりで夜読むな」
新青年という雑誌から怪奇話だけを集めた「ひとりで夜読むな」
江戸川乱歩、夢野久作、小栗虫太郎などの知る人ぞ知る作家の怪奇小説だけを集めた至極のアンソロジー
やっぱり、昔の怪奇小説だからそんなに怖くないでしょーと侮っていたけど、いやいや私が馬鹿だった
渡辺温「可哀想な姉」は短い話の中で、歪んだ姉弟愛が描かれていて吐き気がしそうになったし、結末は弟の姉への憎悪が爆発してとんでもない復讐に出るのだけど、その方法がかなり怖かった
自分を馬鹿にした教授に患者の身体を使って復讐する新米医師の話「痴人の復讐」や
肉がザクロのように割れる病気が蔓延した島で、その島で何が起こったのか島民の手記などを手がかりに調査する「柘榴病」という話もぞわりとした
幽霊がどうのというよりも、病や人の思い込みが先走った結果が引き起こす悲惨な結末が怖いと思ったアンソロジーでした。