読書人間の電子書斎

〜今まで読んだ本を記録して自分だけの図書室を作るブログ〜

【生まれた意味】「雪のひとひら」ポール・ギャリコ

「トマシーナ」は幸せな結末だけど微妙だった的な感想を書いたけど、なんだかんだでこのファンタジーな世界観が気に入ってしまって読んだポール・ギャリコ2冊目

↑私が読んだやつとは表紙が違うけど、同じ新潮文庫だから中身は変わらないと思うのでこの作品の短い読書記録をつけていこうと思います。

 

ちなみに「トマシーナ」の感想↓

ellery0y.hatenablog.com

 

★あらすじ

空から生まれた「雪のひとひら

彼女は地上に舞い降りて、人間の子供達と戯れたり、時に理不尽な目にあったりしながらも「雨のしずく」と出会い4人の子供に恵まれる

 

雪のひとひら達は穏やかな川で幸せな日々を送っていたけれど

ある日、火災が起きる

雪のひとひらや雨のしずくはあっという間に消防車のホースに飲み込まれてしまう

彼女達は水となり凶悪な焔と戦い勝利するが、悲しい運命が雪のひとひらを待っていたのであった

 

 

★感想

可愛らしい挿絵が入った子供でも読める童話のような作品だけど、内容は大人向け

 

雪の結晶という可愛いキャラクターが子供達や自然と戯れる様子は微笑ましかったけれど

焔と戦い、夫である雨のしずくに悲劇が起こってからの展開はまるで人間一人の人生を覗いているのかと思わせられるほどリアルな描写で、読んでいて少し苦しくなる

 

雪のひとひらの子供達の旅立ち

日に日に老いていく雪のひとひらがこんな残酷な世界に生まれた意味を考えながら海をたゆたう様子がとても哲学的

 

この世界は人間が中心ではない

 

一つ一つの目に見えない微粒子や生物が存在する事で成り立っている

 

一見、意味のない命に思える生き物(極論を言わせてもらえればゴキだって山の朽木を食べて自然に還す)でも、それらが地球を構成している 

 

どんな小さな命でも、何が欠けてもこの世界は成立しないのだとこの作品を通して学んだ

 

ぶっちゃけ、私なんてなんの役にも立ってないし、生きてる意味なんて考え出すと絶望しそうだけど、雪のひとひらのようにほんの少しでもこの世界を構成する一部になれたらなと思う

 

子供から大人まで充分に楽しめるものすごく深いけど優しい作品だった