読書人間の電子書斎

〜今まで読んだ本を記録して自分だけの図書室を作るブログ〜

【怪談シリーズ】「営繕かるかや怪異譚」小野不由美【優しい世界、短い感想】

こんなに優しい怪談本は読んだことがない

久しぶりの小野不由美作品、良いものを読ませてもらった

↑「営繕かるかや怪異譚」の一作目です

 

★あらすじ

この作品は、6話からなる短編となっている

舞台は古民家で、6人の登場人物が様々な怪異に見舞われる

 

「奥庭にて」

何度閉めても開いている襖…そこから女が出てきて這いずり回る恐怖に悩まされる女性

 

「屋根裏に」

屋根裏部屋の足音に不審感を感じる家族、その足音の主とその秘密とは…

 

「雨の鈴」

雨の日になると黒い和服の女が鈴の音とともにやってくる…しかしその女が玄関に入って来ると死人が出る…その女に狙われてしまった女性 

打開策はあるのか?

 

「異形の人」

家のあちこちにガリガリの老人が現れて、悩まされる女子高生

老人の正体は?この家で起こった陰惨な出来事とは?

 

「塩満ちの井戸」

庭にある塞がれた井戸を改造して使えるようにした旦那さん、庭が使いやすくなった事で奥さんも満足していたのだが、その井戸が開放されてからいくら庭に花を植えても枯れるようになってしまったのだ

 

「檻の外」 

車が何度も故障した事から始まり、やがてガレージに住み着くなにかに気づきその何者かに脅かされる母子の話

 

 

そんな悩める彼らの前に現れる営繕屋の青年

 

彼は、この世で迷い彷徨い歩く幽霊達を強制的に祓うことはせずに、古民家を修繕し幽霊を迷わせたり、閉じ込めたりするような工事をして幽霊を封じ込める

 

イデアで幽霊と勝負をする新しい怪談

 

 

★感想

とても優しい世界

 

普通の怪談本となると幽霊と戦ったり、強制的にお祓いしたりするのが定石だけど、この作品は新鮮

 

「そんな方法で幽霊を封じ込めるのか!」と意表を突くような改装をしたり、なぜ怪異が起こっているのかという謎にも迫る驚き要素はもちろん

この作品に登場する幽霊はどれも生きてる人間の都合や勝手で亡くなり、未練を残した者ばかり

そんな彼らを無理に祓ったりせずに、彼らが安心する場所だけを与えるためにうまく工事で改装して共存しようという営繕屋の青年の優しさを感じる作品だった

 

迷わせたり、閉じ込めたりが幽霊にとって幸せか、強制的に成仏させるかどちらが幸せかは分からないけれど、よほど凶悪な悪霊ではない限り彼らが満足して、自らの意思であの世へ旅立つ方が良いのではないかと私は思うので、修繕して彼らの安心できる、満足できる場所が与えられるならそれに越したことはない

 

幽霊達が一方的に悪いわけではない、存在したって良いのではないか、著者の亡くなった者への敬意を感じる一冊だった

 

あと、やたら幽霊に詳しい営繕屋の青年が何者か知りたいから続編も読みたいな