読書人間の電子書斎

〜今まで読んだ本を記録して自分だけの図書室を作るブログ〜

十字架 重松清

今現在、いじめにあっている人にこそ読んでほしい。


それと、私もいじめにあったことがあるから

少し感情的になるかもしれません。


※あらすじ


主人公は中学2年生の真田裕。

同級生の幼馴染みフジシュンがいじめを苦にして自殺をする。


彼の遺書には、少しはしょりますが

〈真田裕様。親友になってくれてありがとう。幸せな人生を祈っています〉

〈三島武大。根本晋哉。(加害者達)永遠に許さない〉

〈中川小百合さん。迷惑をおかけしてごめんなさい。誕生日おめでとうございます。

幸せになってください〉

という、名指しの遺書が残されていた。


遺書に名前を書かれていたことをきっかけに

裕と小百合はフジシュンの家族と交流するようになるが

それは、傍観者だった自分の罪と向き合う日々でもあった。

 

十字架 (講談社文庫)

十字架 (講談社文庫)

 

 


フジシュンが自殺をしたあとの家族の…特にお母さんの苦しみ。


同級生たちはフジシュンを忘れて成長して大人になっていく

当然、新しい思い出だって増えていく…


でも、お母さんのフジシュンの思い出は中学2年生まで。


そして、これから増えていくこともない。


自殺を通して加害者に罪悪感を与え復讐をしたいと

フジシュンはもしかしたら考えていたのかもしれないけれど加害者は反省の色もない。


傍観者だった同級生もフジシュンを忘れている


いじめの自殺がどれほど愚かしい行為かが、よく描写されている。


そして、その愚かしい行為が家族をどれだけ狂わせるかもよく描かれている。


また、フジシュンの家族と交流を続けるうちに

裕がもうこれ以上、罪の意識を自分だけに押し付けるのはやめてくれと

怒りを感じるなどの細かい感情描写もリアルで苦しいのに読み進めてしまう。


※思ったこと


印象的だったのはフジシュンの葬式で参列したフジシュンの同級生たちに

「人を見殺しにしたやつらのクラスだってことだよなあ」

「土下座しろよ、おまえら」

と、罵声を浴びせたフリーライターの田原さんという人がいた


言いたいことは分かるんです。


でも、私のいじめの経験もふまえると

いじめって、本当に加減を知らない。

加害者はどこまでも、残酷になれる。

そいつらから被害者を助けたくても

自分も同じ目に遭うかもしれない。

 

もし、いじめ現場を見ても田原さんは同じことを言えるのか?

 

正直な話、私は傍観者に徹すると思う。


仮にそれがとてつもない十字架を背負うことになったとしてもやはり勇気がでないです。


でも、フジシュンの家族の怒りや悲しみ、ずっと続くであろう苦しみを思うとやりきれない。

彼のためにできることがあったかもしれない。

でも、私にはこの本を読んでも分からなかった。


答えがでない。


そして、もうひとつ最後の方で


フジシュンのお父さんが加害者達を許しているか?という質問に

「憎んではいない。でも、許してはいない」

という、言葉を残したのも胸に刺さった。


自殺を選ぶことでいじめから解放されてフジシュンは楽になったかもしれない。

でも、残された家族にとっては、いつまでもずっと、消えない傷となって残るんだ。


※まとめ


学校社会は非常に狭い。

大人になればそこそこ面白いこともあるのに、フジシュンはそれを自らの手で捨てた。


自殺を考える前にほんのすこし未来のことも考えてみてほしかった。


人生は長い。


学生時代なんて一瞬なんだから辛ければ逃げていい

逃げた先になにが待ち受けてるかは分からないが

自殺を選ばないでも、フリースクールや相談室など

たすけてくれるところはたくさん増えてきてるから

そういうところを頼って生きてほしかった。

 

十字架 (講談社文庫)

十字架 (講談社文庫)

  • 作者:重松 清
  • 発売日: 2012/12/14
  • メディア: 文庫