読書人間の電子書斎

〜今まで読んだ本を記録して自分だけの図書室を作るブログ〜

【旅猫リポートスピンオフ】「みとりねこ」有川ひろ【長めの感想】

私が数年前に読んだ「旅猫リポート」にスピンオフが登場したと聞いて「なんだとぅ!読まなくては」と勢いづいてさっそく読み終わった

 

タイトルは「みとりねこ」

このブログにも「旅猫リポート」の感想を記録しているのですが、このブログを始めたばかりなので文章が今以上にめちゃくちゃ

書き直しましたのでお手すきの時にお読みくだされば嬉しいです↓

ellery0y.hatenablog.com

 

「みとりねこ」は7篇からなる短編集でそのうち2話が「旅猫リポート」のスピンオフとなっています、それぞれのあらすじと感想を短く書いて行こうと思います(順番はバラバラです)

 

「ハチジカン〜旅猫リポート外伝〜」

 

旅猫リポート」のサトルが子供時代に飼っていた猫ハチの話

 

ドタバタ劇の末にハチを飼うことになったサトル

ハチはお父さんやお母さん、いつも遊びに来るサトルの友達と楽しく暮らしていたけれど、ある事情でサトルはハチを飼えなくなり、ハチはサトルの親戚に貰われる事になる

 

ハチはその生活が幸せで徐々にサトルの存在を忘れかけていた…そんな時、サトルが家に来るという話を耳にする

これがきっかけでサトルの存在を思い出したハチはサトルを迎えに行こうと頻繁に外出するようになる

 

★感想

旅猫リポート」の子供時代のサトルとハチの幸せな日々を読むことができてよかったし、貰われていった親戚の家でも楽しくやれていたようで安心した

ハチの最期が衝撃だし悔しかったけど、ハチを一等かわいがっていたツトムがハチを看取ったのがこの話の救いなのかな

 

「こぼれたび〜旅猫リポート外伝〜」

 

旅猫リポート」の里親探し中にサトルが里親候補としてもう一人会った人がいた、それはかつての大学の恩師の久保田

 

久保田は大学時代からサトルを信頼していて、久保田の奥さんが死病に罹って看病をしていた時もサトルが久保田の子供達の世話をしていた

奥さんもいよいよだと言う時にサトルは「お子さんたちに奥さんのことを打ち明けてください」と久保田に抗議する

食い下がるサトルに「差し出がましい、もう講義にも来なくていい」と無理矢理に話を切り上げ、それから顔を合わすこともなく二人は離れた

 

今また、サトルに再開することになった久保田はあの時の過去とどう向き合っているのか

 

★感想

旅猫リポートのときと同じように昔話を始める二人、そんな二人を眺めてちゃかすナナという構成に安心する

 

旅猫リポートを読んだ私ならどうしてあの時、サトルが久保田に抗議したのかよく分かる

子供達には自分と同じ思いをさせたくない、子供達を自分自身と重ね合わせたサトルからの必死の願いだったんだろう

 

この話は結末も良かった、ナナとサトルの思い出ができて本当に良かった

 

「みとりねこ」

 

表題作

年老いた猫、浩太は桜庭家の家族の飼い猫

醤油などの色を付くものを駆使して肉球のスタンプを押すのが好きで、テーブルに肉球の跡を残すのだ

桜庭家のお母さんはそれを「画伯になる」と言って笑い、次男の浩美はいたずらだと思っているけれど、浩太がスタンプを押すのには故・先住猫のダイアナとある約束をしているからだった

 

★感想

べただけどこういう話は弱い

 

浩美が生まれた時から一緒にいた浩太

浩美が大人になり一人前になるまでを側で見守り続けるその愛情の深さにも泣かされるし

「猫は人間より早く死ぬけど、浩美を悲しませたくない」とダイアナと話し合い浩美を悲しませないために出したアイデアが純粋すぎてこれまた泣けた

 

猫に限らずペットを飼うって別れの繰り返しで「悲しくて嫌だ」と思うけど、無償の愛で繋がっていた日々が確かに存在した事も忘れてはいけない

 

「猫の島」

 

父の再婚相手の晴子さんと関係は良いのだけども一歩なじめないリョウは、父の仕事を兼ねて晴子さんも一緒に3人で沖縄旅行に行く事になる

泊まった場所ははじめて父と晴子さんが出会った場所

リョウがのんびりと過ごしていると片目の濁った老婆に声をかけられる

聞いて見るとどうやら、老婆は父と晴子さんの過去を知っているようなのだが…

 

★感想

この話はファンタジー味があって好き

カラスに襲われた仔猫を助けるお父さんと晴子さんに老婆は「自然に逆らう行為だ」と言うけれどちょっと面白いオチが待っている

猫は恩を忘れないんだな

 

「トムめ」

 

なんだか南木桂士の「とらや」を思い出すタイトル

「とらや」は涙なしでは読めないけど「トムめ」は猫と飼い主の惚気話が日記形式で描かれている

「おいおい、本当は猫が可愛くて自慢したいだけだろ」とニマニマしながら読み終えた

 

シュレーディンガーの猫」

 

香里が里帰り出産を終えて家に帰ると漫画家の夫、啓介が仔猫を拾っていた

ただでさえ、頼りないと夫なのに「子供に加えて仔猫なんて…」と不安になる香里だったが夫の成長を目の当たりにしていくうちに香里自身も変わっていく

 

★感想

漫画を描く以外は何もできない啓介の父親として猫飼いとしての成長が素晴らしい

啓介が仔猫の世話について知恵袋で間抜けな質問をして釣り扱いされるのは笑ったし、香里の啓介へのツッコミも面白い話

 

※ちなみに初回特典として、啓介の書いた漫画も読めます

 

粉飾決算

 

猫よりハイエナが好きでクラゲをいじめる、でも仔猫は助けちゃう…感覚が謎なお父さんとその家族の物語

命の灯火がつきかける時に、その人の本心が見えるんだなと感じた話

お父さんの不器用な愛情が微笑ましい

 

 

★まとめ

人間と猫の何気ない日常を描いた今作

旅猫リポートのようにグズグズに泣くことはなく笑いあり、少しの涙あり

猫を通して繋がっている様々な人間模様と猫あるあるが全開のほんわかストーリーが楽しめる本だった