【一見ホラーなミステリー】「鬼の棲む家」吉村達也
この前、読了した「鬼の棲む家」
吉村達也さんは「文通」という作品を去年読んで、悪い意味で衝撃を受けた作家さん
…で、これが私が読む吉村達也作品2作目なのだけども、やっぱり安定して面白かった…というか…うん…なんとも言えない
★あらすじ
新婚まもない華子は古びた借家を手に入れ夫の亮介と住んでいたが、亮介はこの家に越してから華子に頻繁に異常なまでの暴力をふるうようになった
追い詰められた華子は、気晴らしに家の玄関を改装しようとしたが
その時に、ドアの木口に「ノブオ キット コロシテヤル」という恐ろしい文言が刻み込まれているのを発見する
調べてみると、その借家は華子たちが借りる前も夫婦が住んでいて、やはり華子と同じように奥さんが夫に暴力を振るわれて自殺していた事が発覚するのだ
それを刻んだのは、恐らくその奥さんだ…
不気味な事実を知り不安定になっていた華子だったが、亮介の暴力は日に日に悪化していった
そしてとうとう華子は耐えられずに意識が朦朧としたまま電動工具で亮介を殺害する
それを知った華子の父親の稔は、華子の容疑を晴らしてやろうと凄腕弁護士の向井に依頼して独自の調査に乗り出すが、そこで本当に華子を追い詰めた鬼が姿を表すことになる
★感想
序盤はかなりホラータッチで「前の住人が華子たちを呪っているのか?」とか心霊的な事を考えながら読んでた…
それほどに怪奇現象のオンパレードだったのに、読み進めていき弁護士と父親の調査のターンになると一気に心霊的な事象から離れて現実的なミステリーに変わっていくふしぎな小説だった
結末は盲点をつかれ見事に騙された…ただ、カンの良い人とかなら稔と華子の姉のやり取り、過去の家庭環境とかでうっすら気付くかもしれない
でも私はあっさり騙された
読後感は…まあ…「文通」読んだ時と同じような気分になった
良い感じに終わらせてるけど、読者の心に言いしれぬ気持ち悪さとか胸糞悪さを残す感じ…
どうしたらこんな絶妙な気分になれる話が書けるのだろうか?
読んだあとしばらく頭を抱えてしまう…こんな話をかける吉村達也さんは色々とヤバイ作家さんだと感じる
まあヤバイとか書いたけど、ライトにサクサク読めるのも吉村達也作品の魅力で、ミステリーといっても謎解き要素とかはほとんどない、でも次々と新事実が発覚して続きが気になって読んでしまう、そして最後はしっかりと伏線を回収していく
あっさりしてるのに話の構成等に安定感がある作家さんなのである