読書人間の電子書斎

〜今まで読んだ本を記録して自分だけの図書室を作るブログ〜

【最近読んだ本まとめる】「またまたへんないきもの」早川いくを 「香川照之の昆虫すごいぜ」「麻雀超コスパ上達法」【愚痴あり】

最近読んだページ数の少ない本をさらっとまとめていこうと思います

 

最近、Kindleunitedも活用して読む本の幅が広がって読書が楽しくなってきたので読んだ本がたまる一方

ブログに記録するのが遅くなってきてるので、ここで3冊くらいまとめてしまおうと思います

 

「またまたへんないきもの早川いくを

前作の「へんないきもの」はへんないきものをイラストでブラックジョークや皮肉を交えて解説してるので面白かったけど、2作目である本作は前作のノリに加えて

 

寄生虫であるサナダムシをお腹で飼った事のある藤田紘一郎医学博士との対談がためになる

寄生虫は悪いイメージがあるけどダイエット効果がありアレルギーを抑えてくれる良いサナダムシもいるらしく、現代の清潔主義は逆に人間の免疫力を下げていると警鐘を鳴らしている

かといって、サナダムシを腸で飼いたいかというとキツイので適度な不潔は免疫をつけるために必要だと感じた

 

また、この本に載っている生き物のほとんどが乱獲、森林伐採、温暖化、農薬で絶滅危惧種にあるらしい

それらに対しての著者の憤りが印象的だったし、私自身もよく分かる

私は元々、子供の頃は昆虫が身近にいる山で遊んでたし、家庭菜園に寄ってくる虫は駆除せず育てるくらい昆虫も動物も自然も好きだ

 

とはいえ(↓ここから愚痴)

 

野菜につく虫を嫌がる人がいるから駆除する(そうしないと野菜が売れないから農家さんも困るし)

「動物かわいい」と言いながら毛皮を着て、温暖化は進み氷が溶けシロクマやペンギンは死に絶え

便利な生活を求め森を切り崩すくせに余った土地は動物に譲らず駐車場にして住み着いた野良猫は処分、餌をなくして森から降りてきた生き物も処分

 

動物から見ると人間は譲歩せずに家と資源を奪う違法地上げ屋みたいなもん

 

私も間接的に動物を殺してると思う、こうやってネットやエアコンを使って、呑気にペット飼って便利と娯楽を享受して環境破壊してる

生き物が苦しみもがいてるのに私なんかが生きてる罪悪感も昔から感じてるけど、だからって私一人の力で何ができるのか?

面白いけど何も救えない自分自身に怒りと無力感を味わった、この手の本にしては辛い読書体験だった

 

香川照之の昆虫すごいぜ!

でっかい昆虫の写真に昆虫の体の仕組みの解説文や、昆虫の捕り方と持ち方が載っていて子供でもわかりやすいけど、大人も勉強になる一冊だった

この本に収録されてる昆虫は、私の好きなトノサマバッタをはじめモンシロチョウ、オニヤンマ、タガメ

 

モンシロチョウの鱗粉にはメスを寄せ付ける匂い袋がついてる事や、タガメが空を飛ぶ事、オニヤンマが5年生きる事は知らなかった

最終章では香川照之さんの海外ロケでの昆虫採集の様子を楽しむことができるのだけど、熱帯に住むハナカマキリはやっぱりきれい

 

この本、香川照之さんのロケの裏話も楽しめるのだけども愛のあまりオニヤンマにキスする香川照之さんの写真が載ってて大爆笑した

虫好きにも程がありすぎる…この本は、昆虫好きが読む図鑑というより香川照之さんの溢れる虫愛を堪能する図鑑です

 

 

 

↓ここからは完全なる趣味のための本

「麻雀超コスパ上達法」金太賢

最近、麻雀で勝つ事が増えたけど今ひとつ足りない物があると思ったので手に取った本

読んだ感じは初心者から脱出した中級者にぴったりな本で、実戦はもちろんネットゲームでも使える戦術満載

 

よく麻雀で見る形(なかぶくれ、四連形)の対処法や、亜両面や多面待ちの読み方、泣き仕掛けはどのタイミングで何回鳴くか、染め手を作るのはどんな時か、基本的な牌効率、オカの計算方法など

 

麻雀初心者の私としてはとても参考になった

 

これからバリバリ打とうと思う

【3回生まれ変わった犬】「僕のワンダフルライフ」【少し長めの映画感想】

猫を飼ってるけど、元は犬派だった私

最近、本当に犬に飢えていてずっと気になっていたのでやっと観ました

この映画の原作はこちらですが、たぶん読むと泣く(動物ものは本当に無理)ので、まだ読んでません…近いうちに読みたいけど…

 

★あらすじ

仔犬の頃にさらわれ、子供だったイーサンに助けてもらったベイリー

 

イーサンが高校生になるとイーサンにハンナという彼女ができる

デートの時はいつも二人と一匹

楽しい日々を過ごしていたがイーサンの両親が離婚してしまう

 

そんななかアメフト特待生で大学の奨学金を勝ち取ったイーサンだけど、それを妬んだチームメイトがイーサンの家に放火する

炎に巻かれながらお母さんとベイリーを助けて、家の二階から飛び降りて逃げ出したイーサンだったが足を負傷してアメフトができなくなくなり奨学金がおりなくなる

 

自暴自棄になりハンナとも別れて農業系の学校に通うためイーサンは家を出る

数年後、ベイリーは老化で腎臓が弱りイーサンに見守られながら亡くなっていった

 

しかし、次に目を覚ますとまた仔犬になっていた

 

しっかりとイーサンとの記憶を引き継いだまま…ベイリーはイーサンと出会うために生き抜く事を誓う

 

1回目の転生はエリーと名付けられ警察犬となり活躍していたが、女児を誘拐した犯人に撃たれパートナーだった警官に見守られながら殉職してしまう

 

2回目の転生は女子大生のマヤに飼われティノと名付けられる

マヤの恋愛、結婚、出産を見守り同居犬の死を見送り、自身も老いていきマヤに見守られながら2回目の犬生を閉じていく

 

3回目はウェンディという女性に飼われてワッフルズと名付けられる

しかしここでは、ウェンディの彼氏は犬嫌いで外に繋がれっぱなしで飼育放棄されてしまう、ウェンディは動物虐待の通報をされて警官に注意をされる

ウェンディの彼氏はワッフルズ(ベイリー)を車に乗せて遠くに捨ててしまう

 

とはいえ、ウェンディに未練なんてないベイリーは野良犬となる

 

野良犬として街をさまよっていると懐かしい景色が…記憶が蘇り一心不乱にイーサンと一緒に住んでいた家を目指す

 

そこには50代(たぶん)のイーサンがいた

 

渋っていたイーサンだったが、ワッフルズになったベイリーを再度飼うことになり新しくバディと名付けられた

 

しかし、イーサンとバディに起きる奇跡はこれだけでは終わらない

 

 

★感想

めっちゃ泣けるというわけではないけど「ベイリー何度も生まれ変わって頑張ったな…」という気持ちで泣き笑いになってしまう作品だった

 

特に1回目の転生

警察犬になりパートナーだった頑固で孤独な警官と少しずつ心を通わせていく…そこからのベイリーの殉職

警官の気持ちを思うと悲しくてならない 

撃たれて息絶えだえになっているベイリーに寄り添う警官の項垂れた背中に心が締め付けられた

 

個人的にこの場面が映画のハイライト

 

3回目の飼育放棄は胸糞悪かったけど、すべての人間がペットを可愛がるわけではない最低なやつもいるという、ペット界隈のダークサイドを描いているのがリアルで良いと思う

良い人ばかり出てきたら、ご都合主義感があるし…

(本当は飼育放棄ではすまないもっとやばい人間もいるんだけどね)

 

しかもウェンディの彼氏が捨ててくれたおかげで、イーサンと出会えたわけだから結果オーライかな

 

ラストはもちろんハッピーエンドなんだけど、イーサンにベイリーだと気づいてもらうためにバディが取った行動が良かった

ベイリーが若い頃のイーサンと遊んでいた時に取っていた仕草…二人だけの合言葉…

30年以上の月日が立っていても、イーサンがベイリーの事を忘れていなかったという所に絆を感じる

 

私の猫も私を探して転生とかしてくれるかなーとか考えたけど、あいつらめんどくさがりだからベイリーみたいな事はしないだろうな…とか自分のペットと比べながら観た映画

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【悪魔のいけにえ前日譚】レザーフェイス-悪魔のいけにえ-【少しのネタバレあり】

日曜日にアマプラつけてぼーっと眺めてたホラー映画

レザーフェイス-悪魔のいけにえ-」

この映画は名作「悪魔のいけにえ」の前日譚となっているらしく、あのレザーフェイスの誕生が描かれている

(これが悪魔のいけにえ。リメイクでテキサス・チェーンソーがある)↓

名作映画のスピンオフは苦手だしあんまり期待はしてなかったけど、まあまあ面白かった

 

★あらすじ

殺人一家ソーヤー家に生まれたジェド(後のレザーフェイス)は、殺人練習をするため家族の手引きによってカップルの片割れのベティという少女を小屋の中で殺す

その現場に駆けつけた警官はベティの父親

警官はいつも殺人事件の第一発見者がソーヤー家の人間であることを怪しみジェドを更生施設に入れる

 

それから10年後、更生施設にジーという看護師がやってくる

 

ジーは施設で働き始めて早々アイクという男に襲われそうになるがジャクソンバッドという優しい青年二人に助けてもらう

ジーは二人に感謝しながらも他の収監者にネズミの踊り食いをさせようとしているクラリス(アイクの彼女)や、電気治療と称した拷問を収監者に食らわせる施設長など施設の異常さに面食らう事になる

 

そんな中、ジェドの母親がやってきて「ジェドを施設から出してちょうだい」と施設長に掛け合う(そう、ジェドもこの施設にいるのだ)が、施設長には相手にもされず案の定ヒステリーをおこし、鍵を盗み施設内の錠を開けて収監者を逃してしまう

 

チャンスだとばかりに混乱に乗じて地獄のような施設から逃げ出す収監者たち…

 

合流したアイクとクラリスは、バッド、ジャクソン、リジーを車に乗せて脱走する

 

物騒なアイクとクラリスから逃げたいリジーだったが「お前が逃げたらジャクソンとバッドを殺す」と脅されて5人で警察から逃げながら逃避行をする事になる

 

ジーの運命は?そもそもジェドはどこにいるのか?

レザーフェイス誕生までのカウントダウンが幕を開ける

 

 

 

★感想(確信に触れるネタバレあり)

まずこの映画で目を見張ったのがクラリスの射撃技術

そこかよ…って思うかもしれないけど、ぜひこれから観る人も、もう観た人もクラリスの射撃に注目してほしい場面

 

腹を空かせたアイクとクラリスはリジー達を連れてレストランに入り、拳銃を奪うためにレストランにいる人達を殺すのだけども、拳銃を手にしたクラリスの射撃力の高いこと高いこと…

 

逃げ惑う人達にピンポイントでヘッドショットをかましまくる

 

これ、地味にすごくない?ぜひクラリスにはFPSをプレイするゲーム実況者としてYou Tubeで活躍していただきたい

 

それはおいといて

 

相変わらずこの世界の住人は話は通じないわ、人殺す事に躊躇がないわ、死体見つけても日常とばかりにスルーできる奴らばかりで嫌悪感は湧くものの、施設から逃げてからの展開が早く余計がないので観やすかった

 

ぶっちゃけると、ジェドは逃避行をしているこの5人の中にいるんだろうと予想はついてたんだけど、誰がジェドかわかった時「ジェド?お前が後のレザーフェイスなのか!?」と少し驚いてしまうような人物だった

(ルックスがレザーフェイスと似ても似つかないから…)

 

ジーと、ベティを殺された警官がソーヤー邸から共に逃げ出そうとする所は少しぐだったけど、最後の警官の生首がぶっ刺さってるシーンでは「これは悪魔のいけにえの冒頭を思い出すな…」とニヤリとした

 

悪魔のいけにえ」はもちろんリメイクの「テキサス・チェーンソー」も観てるけど、前日譚であるこの作品はグロ要素はそれほど…(慣れてる人は平気だと思う)

 

レザーフェイスの前日譚は必要か…?とは思ったけどすっきり伏線が回収されていくし、結末がきれいに「悪魔のいけにえ」に繋がっていくから普通に楽しめた

 

贅沢を言うならこの作品は今風だし画質がきれいすぎる、前日譚なんだから「悪魔のいけにえ」の時のような画質にしてほしかったかな

 

アマプラで無料で観れるのでぜひ!

 

【読む前の自分に戻りたい】「隣の家の少女」ジャック・ケッチャム【感情的な長い感想、ネタバレあり】

スティーブン・キング絶賛というあおりに引かれて手に取った本書

ホラーかミステリーみたいなもんかなと軽々しい気持ちで読んだんだけど、読み進めていくうちに吐き気を催した

 

グロ耐性がある人でもこの作品は耐えきれるものではないと思います

なるべく過激な表現は避けて書きますが性的虐待や性犯罪などのトラウマがある方はブラウザバックして下さい

 

★あらすじ

両親の仲が悪く家庭環境に問題のある十二歳のディビッド

ある夏の日、川でザリガニ釣りをしているとメグという少し年上の美少女に出会い一目惚れする

彼女は両親が亡くなったので、妹スーザンと一緒に叔母であるルースの家に引き取られてきたという(ルースはディビッドの隣の家に住んでいる)

 

ディビッドはルースの家に通いルースの子供達やメグと過ごす日々を心から楽しんでいた

幸せな日々だったが、しだいにメグがご飯を食べさせてもらってない事、メグがルースの子供達にいじめられている事などメグが異常な状況下に置かれている事を知る

 

そして、とうとうこの最悪な環境に耐えかねたメグは自身が置かれた状況を警察に相談する…が、警察はメグの話を「ルースは君を想ってやっているんだよ」とスルー

 

おまけに警察に相談した事がルースにバレてしまう

 

ルースは怒り狂い、罰のために「メグを家から出さない」という決まりを作る

 

ディビッドもメグの軽率な行動に腹を立てしばらくはルースの家には行かなかったのだが、数日後、気まぐれにルースの家に遊びに行ったらメグは地下室の中でルースの子供達に暴力を振るわれていた

 

スーザンを人質に取られているのでメグは反撃すらできない

 

メグは立ったまま縛り上げ全裸にされる、それを笑いながら眺めるルース

ディビッドはそれを異常だと感じるが、メグの裸に魅了され、なぶられるメグを見たいというサディズム的な欲求に勝てずそれを止めることをしなかった

 

地下室で縛られ閉じ込められたメグへの虐待は近所の子供も加担して日増しに「拷問」といえるほどの行為へとエスカレートしていく…

 

この話は実際の事件がモデルになっていて「シルビアライケンス事件」と言われている

ja.m.wikipedia.org

↑いちおう、Wikiへのリンクを貼っときますが、かなり凄惨な内容なので感受性が強い方や精神的に弱っている方にはおすすめしません

トラウマになる可能性があるので読むのは本当に自己責任でお願いします

※このガートルードという奴が主犯でルースのモデル、無期懲役判決が出ています

 

 

★感想(長め)

読了後の虚脱感が凄かった…この作品は、実在の事件をモデルにしただけであくまでフィクションだと思いながら読むのが良いのかも

 

メグが衰弱していく場面では助かってほしいけど、それが叶わないならいっそ早く亡くなってほしい、そうすればもうメグが苦しまされる事はないからと願ってしまったほどに辛かった

 

この話はメグとスーザン以外誰にも同情はできない

 

ルースを主犯としてルースの子供達と近所の子供がこぞってメグに悪逆の限りを尽くす

ルースはメグをあばずれだと言い、メグを男と交われない身体にすればメグは完璧になるのだ…と謎理論を垂れている場面は教祖のようだし、集団になるとたがが外れる子供達も怖い(大人になったらどうなるんだ)

 

メグの体に卑猥な言葉を掘る、妹のスーザンの前で凌辱する、果てにはメグの性器を〇〇する場面はもう耐えられなかった

この物語の中に私を入らせてくれ、私がこいつら全員こ〇してやるから…と思ったほどだった

 

ディビッドだって最終的にメグを逃がそうとしたけどその行動はもっと早くにできたはず、メグが死にかけてからでは遅い

中年になったディビッドが後悔する場面があるけど、子供の頃のディビッドは痛めつけられるメグに明らかに興奮していた、親にバレたら怖いという自己保身と自分の欲望のために通報すらしなかった

その罪は一生背負うべきものだと思う

 

もちろんメグを死に至るまで痛めつけた子供達も地獄に落ちるべき

ルースの最期も生ぬるい、ルースも縛って熱湯をかけて屈辱に満ちた言葉を掘ってやりたい

 

……ただ、この本を読んでいて一番嫌だったのは「この先どうなるんだろう」と怖いもの見たさで読み進めた自分

これでは傍観者だったディビッドと同じではないか?自分は鬼畜なのか?と混乱し、嫌悪感が湧いた

それとも、ここまで気持ちの悪い話をスラスラと読ませるのがジャック・ケッチャムの実力なのだろうか?

ある意味すごい才能だけど、この著者の本はもう読みたくない

「これを読んでる自分はおかしくなってしまったのでは」と思い悩んでしまうから

 

しかしなぜ、ルースはメグの女性器ばかりを執拗に痛めつけたり、女同士なのに性的虐待めいた事をするのかがわからない…レズビアンでもないし…

ルースは女性という性にコンプレックスがあるのか?これからいろんな男性を魅了するであろう若い女であるメグに嫉妬したのか?ルースの夫はルースを捨てて逃げたらしいけど、ルースの夫が若い女と不倫でもしてたとか?

理由は最後まで分からないけど、私には年老いた女が若い少女に向ける嫉妬に思えた

 

だとすると、嫉妬だけで残忍な事ができる人の皮を被った鬼みたいな「生き物」が現実にいたんだよなあ…身震いする

人は集団になると残酷になれる、どこの世界にもこんな狂った奴らはいるし、過去にもこの手の事件はある、今こうしてる間にもこんな事件は起きている

 

自分の身は自分で守らなければいけない

 

近頃は物騒なのでこういう奴らがいたら全力で関わらないようにしよう

このブログを読んでいる方も本当に気を付けて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【自業自得がまねく悲劇】「ラストファミリー」森村誠一

結構前に読んで、記録し忘れていた本、森村誠一の「ラストファミリー」

これは、三篇からなる短編集となっていて少し異色です

ちょっとジャンル分けに困る作品だなあと思ったのですが、さらっとあらすじと感想を書いていきます

 

「ラストファミリー」

表題作

娘と息子を亡くし死を待つ身となった老婆のこうの前に中村という泥棒の青年が家に侵入してきた

 

ふしぎと中村に恐怖を覚えなかったこうは自分の過去をとつとつと中村に話し始めた

 

というのも、こうの夫は不審死を遂げており、娘と息子は結婚していたがその夫と嫁に追い詰められ亡くなっている

こうが死ねばその財産は娘と息子の夫や嫁に入ってしまう

 

絶対に譲りたくない…憎しみを全面に出すこうに中村が復讐を提案する

 

★感想

これはスカッとするリベンジものなのか…?と思ったけど、最後の最後で裏切られた

 

こうの夫と娘と息子を死に追いやった奴らにじわじわ仕返しする様は「ざまぁ」という感じで読めたし、こうはひとり残されたかわいそうなおばあさんみたいなイメージだったのに、ラスト3ページで因果は巡るもんなんだなと思い知らされるような反吐が出そうな結末が待っている、後味が絶妙に悪い

 

でもこの感じが森村誠一ワールドと言えるので私は好きだ

 

「異次元の夜」

こちらは全10話のSFショートショート

 

体が小さくなっていく彼氏、夢の中での恋愛、同じ日を繰り返すループもの、過去の自分が大量発生する…などなど

 

恐怖というよりも「おお、そう来るのか」というような面白い発想が詰まった話ばかりでかなり読み応えがあったし、森村誠一さんってこういう作風も書くんだなあと新しい発見ができた

 

ダークな世界観に優しさを加えたようなショートショート

 

ちなみに、この作品は森村誠一のデビュー前に「百日草」という美容誌で連載されていたらしい

 

「無責任の恐怖」

とにかくついてない男、保坂

彼は眼前で泥棒に自転車を盗られてしまう

しかし、逃げようとした自転車泥棒は飛び出してきた車に接触して倒れてしまう

 

そのごたごたのあと、保坂は新宿のマンションで殺人事件が起きていたというニュースを目にするのだが、なんと被害者は自転車泥棒接触した車に乗っていた女なのだ

 

保坂の運命は… 

 

★感想

いや、この話は怖すぎる

殺人事件の謎解明から自転車泥棒接触事故に繋がっていく…とぎれとぎれの時系列が線になっていく感じがすっきりするコンパクトなミステリーとなっているんだけど、ラストは格別と言っていいくらい救われない気分になる

 

保坂は事件解決に一躍かって警察に感謝状までもらうけど、めでたしめでたしで終わらない

 

彼は「とにかくついてない男」

 

人の運というのは生まれついてのものなのだ、良い事があっても後で払わなければいけない…というミステリーの皮を被った残酷な恐怖小説だった

 

 

★まとめ

森村誠一作品はいくつか読んで感想を書いたけど、こちらの短編集は今までの作品とは一味違う作風となっている

「異次元の夜」は新しい森村誠一の世界観を堪能できるし「ラストファミリー」「無責任の恐怖」は読みやすいイヤミスみたいな仕上がりになっているのでページ数は少ないけど満足感があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【わかり味が深すぎる】「推し、燃ゆ」宇佐見りん

私が初めて読んだ宇佐見作品は「かか」

ellery0y.hatenablog.com

それに続いて読んだ「推し、燃ゆ」

こちらは第164回芥川龍之介賞を受賞し、2021年本屋大賞9位にもなっています

やはり私はこの作者さんの表現力が好きだ

 

私は文学作品には疎いので毎度のことながら簡素な記録になると思うけど、つらつら書いていこうと思います

 

★あらすじ

ある病気(おそらく発達障害?)を持っていて自らの身体が負担になっている

そのうえ、徹底的に人間社会にも向いていない主人公あかり

 

そんなあかりが唯一生きがいを感じるのは子供の頃にテレビで観たアイドルグループ?まざま座に所属する「真幸」を推す事だった、不器用でも這いつくばるように人生を生きる事ができているのはこの推しのおかげだった

推しのためにバイトへ行き、ブログを書き、SNSで仲間と繋がる…推しはあかりの生命維持装置そのものだった

 

…が、そんな推しが女性を殴り炎上してしまう、そして脱退、浮上する女性関係…推しと共にあかりの生活も最悪な方向へと変化が起きていく

 

活力となっていた推しを失い非情な現実に取り残されたあかりが生きる道は…

 

 

★感想

推し「真幸」の衰退と共にあかりも高校中退、バイトをクビになり、嫌気が差した家族に追い出され孤立していく…まるで真幸とあかりがリンクしているようで、読んでいて辛い

あかりが真綿でじわじわ首を絞められるように追い込まれていく様には思わず「うわー、作者さんここまで追い込むかよ…鬼畜か」と呟いてしまったほど

 

あかりが真幸のように爆発して自宅で綿棒ケースを投げて暴れるラストはすっきりするようなしないような謎のモヤモヤが残る

我に返ったあかりは落ちて散らばった綿棒を一つ一つ拾うんだけど、なんだかそれが情けなくて…でも、綿棒を一つ一つ拾い続ける姿を想像するとまるでその不器用さが生きづらい人の人生のような気もした

 

一つ一つ拾っていった先に何があるのか分からないけど気力のない身体を引きずり虚しさを抱えて生きるしかないと諭されるような世知辛い作品だった

 

でもなあ…この本、好き嫌いが分かれる内容だと思う

推しに依存するあかりは現実逃避にも見えるし、社会不適合者だし…でも人っていくら立派な人でもペット、SNS、グルメ、家族、趣味…形は違えど何かに依存する生き物だからあかりの生き方を否定する事はできない…特に私は…

 

あと、推しに接する時だけは生きている実感が湧くあかりは村田沙耶香さんの「コンビニ人間」の主人公っぽいと思った

 

「推し、燃ゆ」「コンビニ人間」どちらも「普通に生きるの向いてないな」と思った事がある人にはぶっ刺さる本です

 

しかし、宇佐見りんさんの表現力ってすごいね

 

爪が伸びる、抜いても抜いても生えるムダ毛に対してあかりが嫌気がさす場面があるんだけど、その何気ない表現が秀逸

生きている自分の身体が重荷だし、現実を生きれていないのに身体は無駄に細胞を入れ替えて生きようとしている…そんな惨めさを感じさせる良い表現だ

 

これは読んで良かった…この作者さんの次作にも期待して待ってる 

 

 

ちなみにこの本の対極にあるのは「腐女子のつづ井さん」

推しを活力にして全力で生きてる、全オタクの聖書

ellery0y.hatenablog.com


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【星新一 訳】「竹取物語」【感想】

いわゆるかぐや姫だけどちゃんと原作を読んだことがないので、大好きな作家、星新一による「竹取物語」を読んでみました

といっても、かぐや姫のあらすじなんてほとんどの方が知ってる(知らないの私くらい)と思うので、ざっくりと記録しておきます

 

★あらすじ

竹取りじいさんのミヤツコが光る竹を見つけたらそこには小さく可愛らしい娘がいた

子供がいなかったミヤツコは妻のおばあさんと一緒に育て上げた

年頃になり美しく成長した娘は神主に「かぐや姫」と名付けられる

 

そして、美しい娘がいる事を聞きつけた男性達がかぐや姫に求婚をするのだが、かぐや姫はそれをたいそう嫌がり男達に無理難題を与える

 

「み仏の石の鉢」

「蓬莱の玉の枝」

「火鼠の皮衣」

「龍の首の玉」

「つばめの子安貝

 

この「そんなもんねーよ」と言いたくなるほどぶっとんだ品を手に入れるために男達は四苦八苦しながら挑む

 

男達の運命は?かぐや姫はどうして求婚を拒むのか?

物語の最後に待っているものとは…?

 

 

 

★感想

かぐや姫は月の人だから人間とは結婚できず、いつか育ての両親と別れるときが来る…切ない話なのに星新一が訳しただけあってブラックユーモアあり皮肉あり、なのに「竹取物語」の世界観は一切壊してないので安定感がありつつ新鮮な気持ちで読める1冊

 

原文も読めるので日本語の勉強にもなるし、一章ごとに星新一の感想や考察が読めるのも良い

また、星新一のSF感のある文章と昔の作品である「竹取物語」がマッチしてるのも凄い、やっぱかぐや姫が月の人という宇宙設定だからかな

 

言葉遊びも面白くて、例えば「つばめの子安貝はなかった」=「かいがない」とか、かぐや姫と男性達との和歌でのやりとりも絶妙にうまいダジャレが含まれている

竹取物語」が誕生した時代の人もこの手のギャグが好きだったんだなあと思いを馳せてしまった

 

 

しかし改めて竹取物語読んでみると、3年もかかってかぐや姫が欲しがる品を探しに行く男性達はアクティブだな

私だったら3年もかかる時点でかぐや姫の事は諦める…めんどくさいから

 

ミカドが登場してから感動のフィナーレへ…って感じの展開になるけど

竹取物語のハイライトはけして手に入らない物を知恵を巡らし手に入れようとしたり、時にはかぐや姫を騙そうとする男性達の空回りっぷりだと思う

 

5人の男性達の根性を感じる、そしてそれを一蹴する星新一のツッコミが笑える新鮮な名作

 

↓私の本屋的なもの、今まで読んだ本を随時更新していきます。

ちなみに、私の好きなお菓子とゲームもありますがそこはお気になさらず

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