読書人間の電子書斎

〜今まで読んだ本を記録して自分だけの図書室を作るブログ〜

【わかり味が深すぎる】「推し、燃ゆ」宇佐見りん

私が初めて読んだ宇佐見作品は「かか」

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それに続いて読んだ「推し、燃ゆ」

こちらは第164回芥川龍之介賞を受賞し、2021年本屋大賞9位にもなっています

やはり私はこの作者さんの表現力が好きだ

 

私は文学作品には疎いので毎度のことながら簡素な記録になると思うけど、つらつら書いていこうと思います

 

★あらすじ

ある病気(おそらく発達障害?)を持っていて自らの身体が負担になっている

そのうえ、徹底的に人間社会にも向いていない主人公あかり

 

そんなあかりが唯一生きがいを感じるのは子供の頃にテレビで観たアイドルグループ?まざま座に所属する「真幸」を推す事だった、不器用でも這いつくばるように人生を生きる事ができているのはこの推しのおかげだった

推しのためにバイトへ行き、ブログを書き、SNSで仲間と繋がる…推しはあかりの生命維持装置そのものだった

 

…が、そんな推しが女性を殴り炎上してしまう、そして脱退、浮上する女性関係…推しと共にあかりの生活も最悪な方向へと変化が起きていく

 

活力となっていた推しを失い非情な現実に取り残されたあかりが生きる道は…

 

 

★感想

推し「真幸」の衰退と共にあかりも高校中退、バイトをクビになり、嫌気が差した家族に追い出され孤立していく…まるで真幸とあかりがリンクしているようで、読んでいて辛い

あかりが真綿でじわじわ首を絞められるように追い込まれていく様には思わず「うわー、作者さんここまで追い込むかよ…鬼畜か」と呟いてしまったほど

 

あかりが真幸のように爆発して自宅で綿棒ケースを投げて暴れるラストはすっきりするようなしないような謎のモヤモヤが残る

我に返ったあかりは落ちて散らばった綿棒を一つ一つ拾うんだけど、なんだかそれが情けなくて…でも、綿棒を一つ一つ拾い続ける姿を想像するとまるでその不器用さが生きづらい人の人生のような気もした

 

一つ一つ拾っていった先に何があるのか分からないけど気力のない身体を引きずり虚しさを抱えて生きるしかないと諭されるような世知辛い作品だった

 

でもなあ…この本、好き嫌いが分かれる内容だと思う

推しに依存するあかりは現実逃避にも見えるし、社会不適合者だし…でも人っていくら立派な人でもペット、SNS、グルメ、家族、趣味…形は違えど何かに依存する生き物だからあかりの生き方を否定する事はできない…特に私は…

 

あと、推しに接する時だけは生きている実感が湧くあかりは村田沙耶香さんの「コンビニ人間」の主人公っぽいと思った

 

「推し、燃ゆ」「コンビニ人間」どちらも「普通に生きるの向いてないな」と思った事がある人にはぶっ刺さる本です

 

しかし、宇佐見りんさんの表現力ってすごいね

 

爪が伸びる、抜いても抜いても生えるムダ毛に対してあかりが嫌気がさす場面があるんだけど、その何気ない表現が秀逸

生きている自分の身体が重荷だし、現実を生きれていないのに身体は無駄に細胞を入れ替えて生きようとしている…そんな惨めさを感じさせる良い表現だ

 

これは読んで良かった…この作者さんの次作にも期待して待ってる 

 

 

ちなみにこの本の対極にあるのは「腐女子のつづ井さん」

推しを活力にして全力で生きてる、全オタクの聖書

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