「ケーキの切れない非行少年たち」宮口幸治
3月に入って読んだ本
医療少年院で勤務をしていた著者のレポと言ってもいいような1冊
少年院、つまり犯罪を犯す少年達には大人に気付かれなかった知的障がいや発達障がいが隠れているという
タイトルの通り、ケーキを3等分できなかったり、発達障がいの特性のため身体をうまく使えなかったり、筒の中に入ったコルクを道具を駆使して取ることができなかったり融通が利かない
それゆえ周りと衝突したり、感覚のずれで学校などの社会からつまはじきになり犯罪を犯すようになる…という段階を大抵の非行少年たちはふんでるらしい
そこまではだいたい私も察していたのだけども、ある少年殺人犯が自分の犯した罪を「悪い事」と自覚していないどころか、自分が優しい人間だと思っていると言っていた事に驚いた
そんなことは海外の有名なシリアルキラーですら言わない
というのも、そういう少年の問題は
認知機能の歪み
に、あるらしい
例えば1例だけど…
声をかける→無視される
このような事があれば、一般の人なら「声が聞こえなかったのかな?」となるけど、歪みのある少年は「嫌われているんだ」という怒りに変わる
それが認知機能の歪みというらしく、これが欠如していると物事を理論立てて考える事ができなくなり犯罪という形になる
(キレやすい人の脳構造)
このように本書は非行少年たちの背景を掘り下げ、認知機能を改善する更生施設でのトレーニングを紹介していく内容となっている
★感想
とはいえ、私も発達障がい
いわゆる「多動性」はなく大人しいたぐいだったので周りの大人に気付かれずに大人になってから発覚した
だから、この少年達の感じる周りと感覚が違うのに誰も助けてくれない苦しみはわかる
この子達は健常者に見えるいわゆる「グレーゾーン」ってやつに近いのではないか…と感じた
発達障がいや知的障がいグレーゾーンは、誰にも気付かれずに「ただ変なやつ」と思われるだけで理解されず、厄介者扱いを受け最も苦しむのだけど、現状から言うと社会はグレーゾーンに理解があるとは言い難いよなあと感じる
本書を読んで思ったのは、こういう子達の親も発達障がいの場合が多くて自分の子の異変に気づきにくいので、他人が気づいてやるのが最適だと思われる
例えば、学校とかも勉強を教えるだけではなく教師がよく配慮して観察するとか、専門の医師やカウンセラーを増やしてそういう生きにくい子達に気づける環境を作るとか…そういった児童が相談しやすい環境にするとか…うーん、難しいかなあ…
でも、たいていの犯罪者は
親が未診断の発達障がいや、軽度知的障がいで家庭環境が悪い→そんな環境で育った子供も問題児になる→社会からの孤立
となってるので、その辺に犯罪者を作る要因があると私もつねづね思ってる
本書を手がかりに周りの大人が救いを求める少年達に手を差し伸べられる社会になれば…と思った
※このブログでは「少年達」と書いてるけど、もちろんこの中には「少女」も含まれます
【本の世界で謎を解く】「この本を盗む者は」深緑野分
2月に入り読み終わった本
本屋大賞にもノミネートされていた
「この本を盗む者は」深緑野分
本好きなら憧れるミステリーかと思いますし、人が死なないのでそこらへんが苦手な人も楽しめる一冊でした
ちなみに、この著者さんの「戦場のコックたち」は名作なのでこちらもおすすめです
最近は頭がぼんやり気味なので文章がハチャメチャだけど、せっかく読んだのでガツガツと記録していこうと思います
★あらすじ
舞台は本の町、読長町
「本探しながら御倉さんで一発だ」と言われるほどの蔵書を抱える御倉館にて不思議な事件が起こる
怪我をして入院した父あゆむの代わりに、御倉館のいっさいを取り仕切るねぼすけの叔母のひるねの世話をする事になった深冬
深冬は本が嫌いなのだがイヤイヤながら御倉館に足を踏み入れると「この本を盗む者は魔術的現実主義の旗に追われる」と書かれた気味の悪い御札を発見する
さらに真白という女の子が御倉館に入り込んでおり深冬は動揺するが、真白は毅然とした態度で「泥棒が来て呪いがかけられた」と『繁茂村の兄弟』という本を深冬に読ませた
その瞬間、読長町は満艦飾の旗に包まれ、月がウィンクをし、あちこちから植物が芽生えた
その世界は『繁茂村の兄弟』の本の世界そのものだった
どうやら御倉館の本には呪いがかけられており本を盗まれたら、その本の世界に閉じ込められるというのだ
呪いを解く方法は犯人を捕まえる事
深冬は、変わってしまった世界から抜け出すために犬になった真白と『繁茂村の兄弟』を盗んだ犯人を捕まえるために本の世界を奔走する
★感想
この本は全5話からなり、深冬は5つの本の世界を探険しながら犯人探しに挑む
話が進むにつれ深冬がブックカースの法則を探る人物と協力したり、御倉館の本に呪いをかけた人物とそのキーとなる存在が明らかになっていくというミステリー
盗まれた本の世界に閉じ込められ、盗まれた本のあらすじにそって謎が立ちはだかるという構成が面白いし、本の世界の登場人物に紛れそブックカースを利用しようとする人物が現れる第2話は書店の万引き行為の罪の重さについて考えさせられた
頼りない深冬が謎を解きテンポ良く進むストーリー展開は読んでいて非常に気持ちが良いし、コロコロと変わる登場人物達や独自の世界観、制限時間が迫ると本から出られなくなるというスリル…著者さんの創造力が凄まじいと感じるし冒険小説みたいな側面もある作品だった
あと、ハードボイルドやファンタジー、SFなどの本の世界を慣れないながらも犯人を見つけるために渡り歩く深冬の姿が、ほんっとーに大変そうなんだけど、いち本好きとしてはとても羨ましい
本の世界って一度は入ってみたいと思うよなあ…私は「百舌の叫ぶ夜」に入って殺し屋の百舌に会ってみたいもの…
(でも叙述トリックの世界に巻き込まれるのってきついな)
最後の謎から結末にかけては、かなりのスピード展開に感じたけど深冬の祖母との確執や人間関係が強調されている
蔵書に対する人それぞれの向き合い方も私には新鮮に映った
深冬が本嫌いになった本当の理由が明らかになり、本を書き、読書を愛する人達の気持ちもそれぞれだと再確認
ミステリーだけど、本好きの人の夢が詰まったファンタジー作品のような一冊だった
ペットロスが読んだ絵本達「いつでも会える」菊田まりこ 「ある犬のおはなし」Kaisei 「ぼくがうまれてきたのはね」うえだまり 「虹の橋」
明けましておめでとうございます
といっても、このブログが一ヶ月ほど止まってたのにはわけがあります
1月7日に私が中学生の時から一緒にいた愛猫17才を糖尿病で亡くしました
無事に葬儀も終えてお骨も私の部屋に置いているのですが、まだ亡くなった事が受け入れられなくて、趣味のゲームもできず本も読めず、もはや何もできず、眠れず…もうどうでもいいよという投げやりな気分が続いています、いわゆるペットロス状態
心にポッカリと穴が空いた気分で私と同じような人もいるのかな…でも長い本は読めない頭に入らないと思ってペット関連の絵本を読みました
とりあえず3冊。ペットロス経験者の目線で読んでしまいました。
「いつでも会える」菊田まりこ
飼い主のミイちゃんを亡くした犬のシロのお話で、シロはミイちゃんを一生懸命探すのだけどどこにもいない
だけどある日、夢を見る。それはミイちゃんとの楽しかった日々の夢
そうシロが思い出せば心の中でいつでもミイちゃんに会えるのだ
★感想
私はミイちゃんを探すシロの側として読んだ、おそらくこれはペットを亡くした飼い主さんに向けた絵本なんだろうな
確かに天国や地獄はあるのか分からないから死後に会えるかはわからない
でも一緒に過ごした楽しかった日々…それだけでなく私が辛く涙していた時も守るように寄り添ってくれていたあの子の優しさは消えたわけではない、私の心の中で優しさがまだ生きている、あの子が残してくれたものだ
だから辛い時はあの子の優しさを無償の愛を思い出して、心の中で、いや部屋で一人のときでもいい…亡くなったあの子の遺骨に語りかけてみようかなと思えた一冊だった
「ある犬のおはなし」Kaisei
飼い主と楽しく過ごしていた犬だったが、徐々に飼い主が犬から離れていき終いには保健所に捨てられガス室の中で苦しみながら息絶えていく犬のお話。魂だけになった犬は飼い主の元へ帰るけれど…
★感想
これは一切の救いがない話だった
ゆいいつ、救いがあるとすれば保健所の飼育員さんが犬を可愛がってくれたこと、ガス室のボタンを押す時に飼育員さんだけが犬たちの死を悲しみ泣いてくれた事だった
犬猫だけでなく鳥も爬虫類も昆虫もあんたらの都合で飼うんだから最期まで幸せに飼ってやれよ
環境が変わったり、アレルギーがあるなら譲渡するなりして命を奪うような真似するなよ、長年飼った犬に情はねえのかとこの本の飼い主の家に火炎放射器ぶっ放してやりたくなる話だった
ペットはとにかく金がかかる、病院や手術で何十万も飛んでいく
歳をとれば介護も必要で汚くなり糞尿も垂れ流す、臭くもなる、子供の時みたいに可愛くもない
そこまで考えろ、それでも愛せるやつだけが動物と家族になる資格がある。人生を捧げると思って飼え。
子猫から育て、どんなによぼよぼでも歳をとった愛猫を愛しいと思っていた、17年間一匹の猫を愛して看取ったんだ
それくらい言わせてほしい
「ぼくがうまれてきたのはね」うえだまり
この本は命残り少ない犬が飼い主に、うまれてきた意味を飼い主に語りかけるという内容
★感想
飼い主がペットにかけてほしい言葉を犬に言わせてるので、ご都合主義感はあったけど、私は絵に癒やされたしなによりあともう一匹いる猫にはこの犬のように思ってほしい…いや、思ってもらえる飼い主になってやると思えた絵本だった
★まとめ
今月はもううすい絵本しか読めなかった
愛猫の死を受け入れたと思っても急に思い出して泣いたり、面白いテレビを観ても内容が頭に入らなかったりする状態だけど小説は2ページずつくらいなら読めるようになってきてるので、近いうちにまた感想を書くと思いますので、本年もよろしくお願いいたします。
ダヤン17才 平成16年4月22日〜令和4年1月7日没
私は天国も幽霊も何も信じない。当然、虹の橋だって。
だけど、もし私が死んだあとにこんな場所があるとするならばここで会いたい、抱っこしたい、匂いかぎたい、私を見てほしいと切に願っている。
【奇抜すぎる児童書】「穴HOLES」ルイス・サッカー
読んで驚いたし、なぜに早く読まなかったのだろう…しかし、記憶を消してもう一回読みたいとさえ思える衝撃の本に出会ってしまった
これは良い本読んだ…読んだことない方は今すぐにでも読んでほしいとまで言いたい
私の語彙力のなさ&文才のなさではこの本の良さが伝わらないかもしれないけど書いていきます
☆あらすじと言う名のこの本の説明
落ちてきたスニーカーを拾ったせいで裁判で訴えられ劣悪な更生施設グリーンレイクキャンプ行きになったスタンリー
そこでは、子どもたちがあだなで呼ばれて、満足のいかない食事や衣服を与えられ、ケチな量の水を飲みながら灼熱の大地で毎日シャベルで穴を掘らされる…この分けの分からない状況から話は展開していく
この本はとにかく進行がハチャメチャでスタンリーの更生施設での仲間たちとの揉め事や友情、穴をほっていると見つけた金色の筒の謎を中心に支離滅裂な過去話が挟まれていく…という構成
スタンリーの祖父エリャ・イェルナッツの過去、祖母との馴れ初め、そして全財産をケイト・バーロウという女犯罪者に盗まれた話
キャサリンという女教師と玉ねぎ売りの青年との恋…引き裂かれた二人…その後の残酷な結末
犯罪者ケイト・バーロウの爆誕秘話とその最期
えぇ…これスタンリーとどう関係するの?という話が物語の合間合間に雨あられのように挟まれる
…この本どうもわけがわからない…
しかしスタンリーが所長室で見つけた化粧ケースをきっかけに、穴で見つけた金色の筒はケイト・バーロウの口紅の蓋である事に気づく
ここから読者も「おや?」と思い引き込まれる
意味のない話が急速に繋がっていき、急展開を見せるのだ
更生施設での唯一の友達ゼロが脱走した事で、スタンリーもゼロの後を追いこの過酷な施設から逃亡する
ゼロとスタンリーが灼熱の大地、過酷な道のりで見つけた数々の手がかり(玉ねぎ)と金色の筒が、施設の秘密を暴き「穴を掘る目的」を明らかにしていく…
☆感想
この本のあらすじ麻雀の「ピンフ」っていう役を説明するくらい難しい
でもこの本は出会ったらすぐにでも買って読んでほしいと言えるほど面白かった今年一番の推し本
児童書なのにミステリー小説みたいに数々の伏線が張り巡らされ、所長の登場とともに伏線が回収され始めて、ゼロとの逃亡劇で点と点が線になり、結末で鳥肌が立って終わる
こんな読書体験をしたのは初めてというか、なんだか脳を揺さぶられた気がする
この支離滅裂な物語展開からこんなにパズルのピースがはまるようなすっきりとした結末に持っていけるなんて物凄い才能だ…と驚きが隠せない
ミステリータッチなんだけど児童書だからハッピーエンドだし、気弱で意思の弱いスタンリーが自ら進んで行動していくという成長も描かれていてそこも感動する要素ではあるんだけど、子供向けだからといって登場人物にご都合展開はなく大人向けな容赦ないブラックさがあるところが良い
あと、読了後は広い世界だけどもしかしたら元をたどれば皆どこかで繋がりがあるのかもしれないと想像力を逞しくしてしまった
とにかく生きてるうちに一回は読んでほしい!
そう声を大にして言いたい本でした
ちなみに、この本は「道」という続編があってスタンリーのその後が読めるらしいので近いうちに読みます。
【12月半ばに読んだ本まとめ】「発達障害かも?というひとのための生きづらさ解消ライフハック」姫野桂 「サンタのクリスマス」REGULUS【短い感想】
最近読んだ短くてすぐに読める本まとめです
「「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」ライフハック」姫野桂
片付けても何故か散らかり、雑談が苦手でいわゆる女子トークというものについていけず、人の話は右から左へ流れてすぐに忘れ、聴覚過敏で人混みに行くと疲れやすい
この本は漫画と、発達障害を持っている著者が同じく発達障害に悩む人達にQ&A方式でライフハックを教えるという構成になっていて非常に読みやすい
ここで取り上げられる発達障害の問題は主に仕事、やっかいな人間関係、複雑な女社会、先延ばしグセ、めんどくさがり、疲れやすさ、忘れっぽさ、についてで、それらの悩みに対して著者が自分なりのライフハックをアドバイスしてくれるといった内容でシンプルな言葉で書かれているし、一ミリずつ積み上げて克服していくといったアドバイスなので「そんな難しいことできないよ」とならないので本当に発達障害特有の特性で悩んでいる人にピッタリです
…が、私は30年ほど生きてるのでどのライフハックもだいたいやり尽くしたものばかりだし、あまり参考にはならなかったかなあ
仕事にしても「合わなければやめて切り替えていこう」という性格だし、人間関係に至っては過去のいじめで目をつけられないようにビクビク生きて精神を病んだので今では「もう人の顔色なんて見ねーよ、いじめられたらやり返してやる」となってるので、ライフハックを駆使してまでめんどくさい世界でやっていこうと思わないようになってしまった…
とはいえ、聴覚過敏や雑踏、光による疲れやすさの対策や、発達障害者にありがちな睡眠トラブルによる体調不良の管理法などはすごくためになったし、私は忘れっぽいので重要な事を腕に直接メモできるリストバンドなどの発達障害支援グッズの紹介が役に立つ一冊でした。
※
「サンタのクリスマス」REGULUS
12月に入りクリスマスらしいものを読みたいなと思ってこちらの絵本を読みました
サンタが青い洋服に着替えて月に乗り星星を巡るロマンチックなお話で、イラストが可愛らしいのにどことなく幻想的だし、色合いも夜空に近い暗めの水色を基調とされているので読んでいて癒やされた
人間の子供たちだけでなく、いつも頑張ってる太陽たちにもプレゼントをあげるサンタさんの優しさが心にじんわり染み渡る絵本だった
どちらもKindleunitedにて読みましたが、楽しい読書時間を過ごすことができました。
Kindleunitedを使ってる方はぜひ。
【毒親ここに極まれり】「キャリー」スティーブン・キング【映画の話もちらっと】
10月頃に読み終えてなんとも言えない気分の後味の悪さを感じた「キャリー」
映画は事前に観ていて知っていたのだけども、小説を読むとより登場人物の心情が掴みやすくなるので良いですね
★あらすじ
地味で変わり者(超能力がある)の高校生のキャリーホワイトは、学校のシャワールームで突然、初潮がはじまり混乱する
彼女は母親に汚らわしい事だという理由で「生理」を教えてもらっていなかった
血が流れる恐怖に慌てるキャリーを面白がってクラスメイトが彼女に罵声を浴びせながら生理用品を投げつける
とにかく最悪の開幕である
その後、家に帰り母親に「どうして教えてくれなかったの?」と詰め寄るキャリーだったが母親のマーガレットは狂信的なカトリック信者?なので「女の罪だ」と言い張りキャリーに祈らせクローゼットに閉じ込める
その頃、キャリーのクラスメイトのスーザンはキャリーに罵声を浴びせていじめていた事を悔いていた
「なにかキャリーにしてやれることはないだろうか」と考え抜き、自分の彼氏のトミーに「キャリーとプロムに行ってあげてほしい」と頼む
キャリーはトミーの事が好きだったのだ
(キャリーが真実を知ると嬉しくないと思うけど)
トミーは二つ返事でOKしてキャリーをプロムに誘う
キャリーは笑いものにされるかもと戸惑うものの、普通の女の子に変わるチャンスだと思い承諾
自分でドレスを作り思い切って胸元を開け、激しく止めるマーガレットを半ば脅すようにして、迎えに来たトミーとプロムに出かけていった
しかし、キャリーのクラスメイトのビリーはプロムをめちゃくちゃにしてやるために「ある画策」をしていた
ビリーはキャリーのことが嫌いな女クリスを連れてプロムで盛り上がっている学校へ向かい、キャリーに豚の血を浴びせかける
そのショックでキャリーの超能力は暴発して街を巻き込んだ悲劇が起きる
★感想
ことごとくキャリーがかわいそうだった
スーザンの償いも伝わらないまま、自分は皆の前で笑いものにされたんだと勘違いをしてしまい、狂気に取り込まれてしまう
といっても、スーザンも天然の嫌なやつに思えた
だって、キャリーが自分の彼氏のトミーを好きなことを知ってたから「プロムの夜だけでも付き合わせてやろう」っていう同情…これ親切だと思ってるかもしれないけどキャリーの事を見下してない?
キャリーが真実を知ってどう思うか考えないのか?
なにより一番ひどいのがビリー
彼女はいじめられても捻くれたり腐ることなく変わろうとしていたのに、この馬鹿な男の悪ふざけによりぶち壊された
若者の鬱憤や10代ならではの無邪気な悪意が描かれていて、それぞれの人物にも生き辛さとか色んな訳はあるのは分かるけど、キャリーへの仕打ちを考えると無神経で屑なやつらにしか思えなかった
そして、この話の元凶マーガレット
キャリーの超能力を恐れ何度も殺そうとしたけどできなかった
その事から恐らく少しは愛情はあるのだろうけど、その育て方は良くない…宗教のためにひたすら娘を抑圧しまくる
宗教なんて自己満なんだからあんた一人で教義を守ってろよとしか言いようくださいがない
娘を所有物にするな
でも、マーガレットにこんなに酷い事をされてもキャリーが最後まで「ママ助けて」「ママの言った通り行かなきゃよかった」と言っていた…
この場面はまだ小さな子供が親に助けを求めてるように見えて胸が張り裂けそうになった
マーガレットが然るべき愛情をキャリーに与えてやってれば…キャリー1人で頑張らせずに誰かが正しい方法で助けてやってたら…少しは違った結末になったんじゃないかと思った
胸くそが悪いのに悲しい小説
【映画について】
ちなみに映画に関しては、リメイク版のキャリーを演じるクロエ・グレース・モレッツが可愛かった
超能力暴発シーンは圧巻だし、血を滴らせながら火の中を歩くキャリーの姿が恐ろしくも美しい↓(アマプラで観れるはずなので、ぜひ!)
でも、私としては初代キャリーの方が小説のキャリーのイメージに近い
キャリー演じるシシー・スペイセクが素晴らしい
いじめられて沈んでる時は陰気臭く微妙な顔に見えるのに、ドレスアップして笑った顔は華やかで可愛いく不思議な変化を見せる面白い演技をする
ただ、序盤の初潮の場面はエグい
でもマーガレットが怖いのはリメイク版かなー…
【旅猫リポートスピンオフ】「みとりねこ」有川ひろ【長めの感想】
私が数年前に読んだ「旅猫リポート」にスピンオフが登場したと聞いて「なんだとぅ!読まなくては」と勢いづいてさっそく読み終わった
タイトルは「みとりねこ」
このブログにも「旅猫リポート」の感想を記録しているのですが、このブログを始めたばかりなので文章が今以上にめちゃくちゃ
書き直しましたのでお手すきの時にお読みくだされば嬉しいです↓
「みとりねこ」は7篇からなる短編集でそのうち2話が「旅猫リポート」のスピンオフとなっています、それぞれのあらすじと感想を短く書いて行こうと思います(順番はバラバラです)
「ハチジカン〜旅猫リポート外伝〜」
「旅猫リポート」のサトルが子供時代に飼っていた猫ハチの話
ドタバタ劇の末にハチを飼うことになったサトル
ハチはお父さんやお母さん、いつも遊びに来るサトルの友達と楽しく暮らしていたけれど、ある事情でサトルはハチを飼えなくなり、ハチはサトルの親戚に貰われる事になる
ハチはその生活が幸せで徐々にサトルの存在を忘れかけていた…そんな時、サトルが家に来るという話を耳にする
これがきっかけでサトルの存在を思い出したハチはサトルを迎えに行こうと頻繁に外出するようになる
★感想
「旅猫リポート」の子供時代のサトルとハチの幸せな日々を読むことができてよかったし、貰われていった親戚の家でも楽しくやれていたようで安心した
ハチの最期が衝撃だし悔しかったけど、ハチを一等かわいがっていたツトムがハチを看取ったのがこの話の救いなのかな
「こぼれたび〜旅猫リポート外伝〜」
「旅猫リポート」の里親探し中にサトルが里親候補としてもう一人会った人がいた、それはかつての大学の恩師の久保田
久保田は大学時代からサトルを信頼していて、久保田の奥さんが死病に罹って看病をしていた時もサトルが久保田の子供達の世話をしていた
奥さんもいよいよだと言う時にサトルは「お子さんたちに奥さんのことを打ち明けてください」と久保田に抗議する
食い下がるサトルに「差し出がましい、もう講義にも来なくていい」と無理矢理に話を切り上げ、それから顔を合わすこともなく二人は離れた
今また、サトルに再開することになった久保田はあの時の過去とどう向き合っているのか
★感想
旅猫リポートのときと同じように昔話を始める二人、そんな二人を眺めてちゃかすナナという構成に安心する
旅猫リポートを読んだ私ならどうしてあの時、サトルが久保田に抗議したのかよく分かる
子供達には自分と同じ思いをさせたくない、子供達を自分自身と重ね合わせたサトルからの必死の願いだったんだろう
この話は結末も良かった、ナナとサトルの思い出ができて本当に良かった
「みとりねこ」
表題作
年老いた猫、浩太は桜庭家の家族の飼い猫
醤油などの色を付くものを駆使して肉球のスタンプを押すのが好きで、テーブルに肉球の跡を残すのだ
桜庭家のお母さんはそれを「画伯になる」と言って笑い、次男の浩美はいたずらだと思っているけれど、浩太がスタンプを押すのには故・先住猫のダイアナとある約束をしているからだった
★感想
べただけどこういう話は弱い
浩美が生まれた時から一緒にいた浩太
浩美が大人になり一人前になるまでを側で見守り続けるその愛情の深さにも泣かされるし
「猫は人間より早く死ぬけど、浩美を悲しませたくない」とダイアナと話し合い浩美を悲しませないために出したアイデアが純粋すぎてこれまた泣けた
猫に限らずペットを飼うって別れの繰り返しで「悲しくて嫌だ」と思うけど、無償の愛で繋がっていた日々が確かに存在した事も忘れてはいけない
「猫の島」
父の再婚相手の晴子さんと関係は良いのだけども一歩なじめないリョウは、父の仕事を兼ねて晴子さんも一緒に3人で沖縄旅行に行く事になる
泊まった場所ははじめて父と晴子さんが出会った場所
リョウがのんびりと過ごしていると片目の濁った老婆に声をかけられる
聞いて見るとどうやら、老婆は父と晴子さんの過去を知っているようなのだが…
★感想
この話はファンタジー味があって好き
カラスに襲われた仔猫を助けるお父さんと晴子さんに老婆は「自然に逆らう行為だ」と言うけれどちょっと面白いオチが待っている
猫は恩を忘れないんだな
「トムめ」
なんだか南木桂士の「とらや」を思い出すタイトル
「とらや」は涙なしでは読めないけど「トムめ」は猫と飼い主の惚気話が日記形式で描かれている
「おいおい、本当は猫が可愛くて自慢したいだけだろ」とニマニマしながら読み終えた
「シュレーディンガーの猫」
香里が里帰り出産を終えて家に帰ると漫画家の夫、啓介が仔猫を拾っていた
ただでさえ、頼りないと夫なのに「子供に加えて仔猫なんて…」と不安になる香里だったが夫の成長を目の当たりにしていくうちに香里自身も変わっていく
★感想
漫画を描く以外は何もできない啓介の父親として猫飼いとしての成長が素晴らしい
啓介が仔猫の世話について知恵袋で間抜けな質問をして釣り扱いされるのは笑ったし、香里の啓介へのツッコミも面白い話
※ちなみに初回特典として、啓介の書いた漫画も読めます
「粉飾決算」
猫よりハイエナが好きでクラゲをいじめる、でも仔猫は助けちゃう…感覚が謎なお父さんとその家族の物語
命の灯火がつきかける時に、その人の本心が見えるんだなと感じた話
お父さんの不器用な愛情が微笑ましい
★まとめ
人間と猫の何気ない日常を描いた今作
旅猫リポートのようにグズグズに泣くことはなく笑いあり、少しの涙あり
猫を通して繋がっている様々な人間模様と猫あるあるが全開のほんわかストーリーが楽しめる本だった